気まぐれにNL・BLetc.健全から危ないモノまで。
今のとこメインはDMCとTOA。
アッシュは今、もの凄くうろたえていた。何にかと言えば至極明解。カンタビレが連れて来たアッシュの補佐役(自称)の少年にだ。
「『はじめまして』アッシュ。グレースと言います。よろしく」
どう聞いた所でルークの声だ。と言っても喋り方が違うので大分違った印象を受ける。おそらくヴァン辺りは気付けないだろう。それに音譜帯に居た頃ルークは声帯模写を見よう見真似で習得していた。この声は『レム』の声だ。腰でクロスするように二本の剣をさしている。
「…はじめまして……グレース」
そういってアッシュもグレースに手を差し出した。そのまま強く握って抱き寄せる。正直な所、顔の仮面は大変邪魔だ。
『なにしてんた、屑。こんなとこで』
『だってアッシュに先手打たれたから仕返し。ちゃんと勉強はしたよ』
実際ルークと別れて行動し始めてから半年が経っている。ルークはもの覚えが早いので、本当に半年で基礎はマスターしたのだろう。この分だと、時間があまって他の専門知識迄習得していそうだ。
「よろしくお願いしますね、アッシュ。あ、ラルゴは何処にいますか?」
ルークは手に大きな板を抱えている。
「今は自室にいるはずだ。何か用でもあるのか?」
『ディストの次はラルゴ丸め込むんだ』
アッシュはルークの手の中の物を見て成る程と言った。ルークが持っていたのはナタリアの肖像画であった。
…………………………………………………………………………………………………………
ラルゴはとても困っていた。それはグレースという少年(なんでもアッシュの補佐官らしい)が置いて行った、キムラスカ・ランバルディアの王女、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの肖像画だった。グレースもアッシュもラルゴの事情を知っているようで、ニッコリ笑って「受け取れ」と言ってきたのだ。
「アッシュ…笑い方がカンタビレに似てきたな…」
何だか底の見えない黒い笑みだ。導師イオンもよくやる。特にアリエッタを虐めた人間には容赦ない。とても病気には見えない感じだ。実際に病気かどうかはモースしか知らないのだが。
「メリル…」
母親に似てとてもかわいらしい少女の肖像画をラルゴはぎゅっと抱きしめると、それを壁に掛けた。グレースは定期的にナタリアの近況を聞かせるとも言い残していた。この際そのことばに甘える事にしよう。で、二人がヴァンを虐めて(?)遊んでいるのにも目をつぶることにした。何事も首を突っ込み過ぎるのはいけないのだ。
後日、ヴァンが持ってきたグレース用の軍服にアッシュがキレてヴァンはしこたま殴られていたが、ラルゴはそれは見なかった事にした。あれはヴァンが悪い。
Next→ダアト・ローレライ教団総本山
「グレース、アッシュの補佐役用の軍服を用意した」
そう言ってアッシュの隣を歩くグレースをヴァンが呼び止めたのは二人が肩慣らしにこっそりザレッホ火山に忍び込んで魔物退治をしてきた帰りであった。因みにグレースはカンタビレの『弟子』であるためヴァンは無条件でアッシュの隣にいることを許している。カンタビレは《大詠師派》ではないが、仕事はとても出来るし、アッシュはカンタビレに懐いて(?)いて、その弟子のグレースとも面識があるようだった。それに信託の盾にはアッシュと同年代の兵士は少ない。友人にもピッタリだと判断したらしい。
「ラインはアッシュの髪の色で《私》が作ったが」
アッシュは物凄く嫌な予感がした。ルークはよく解らずキョトンとしている。ルークはコーラル城のあの部屋がヴァンの仕業だとは知らないのだ。因みにあのあとアッシュが知ったのは六神将の軍服は全てヴァンが一つ一つ手縫いで仕上げた代物だったということだ。仕上がっていないときはアッシュは他の信託の盾兵と同じような物を着ていたのだが、やはり着慣れたものの方が落ち着く。その時聞いて後悔したのだった。知りたくなかったと。
「グレースも脚のラインが綺麗だからニーハイブーツも用意した」
「もってなんだもって」
「お前の脚も綺麗だろう」
ヴァンの変態臭い発言にアッシュはぞっとしながら、隣に居るルークを見た。ルークはアッシュの脚を見て「確かに綺麗な脚線美ですよね」とか言っている。
「採寸を合わせたいから着替えなさい」
ヴァンはそう言って何処からともなくお着替えボックスを取り出した。
「……ここで…ですか?」
「嫌なら部屋で着替えてきなさい」
そう言うとヴァンはルークに軍服の入った袋を渡すと直ぐ近くにある《グレースに与えられた私室》を指した。
「…わかりました。アッシュ、直ぐ戻ってきますから」
『ヴァンでも虐めて待ってて』
「…あぁ」
回線で囁かれた言葉に、アッシュは頷くと、ルークを見送った。
========================================
暫くして、ルークがまた回線を繋いできた。
『どうした』
『…ぅん…、アッシュ…出てきてもビックリしないでね』
カチャリとドアノブの回る音がして、ルークが部屋から出てきた。アッシュはルークを見た瞬間ボッとまるで顔から火が出るくらい真っ赤になった。
「グレース、キツイ所はないか」
「大丈夫です」
ルークの心の中のカッコイイヴァン師匠像は完璧に崩壊していた。個人的にはこの服装は大問題だが、隠密活動するにはこちらの方がグレース=ルークだとばれにくいといったらばれにくい。
「うむ、私の目に狂いはなかった」
「100%狂ってんじゃねーか!屑がぁー!」
アッシュによるエクスプロードがヴァンに直撃した。ヴァンがルークに渡したのは、「アリエッタの軍服に近い物+スパッツ+アッシュの外套に似た物+ニーハイブーツ」完璧に変態だ。アッシュはエクスプロードが命中した後もヴァンの襟首を掴んで顔をたこ殴りにしていた。
「お前も何か言え!」
「はい。ヴァン総長がこんなに変態だとは思いませんでした。アッシュ、こんな人間としてダメな総長は置いておいて、カンタビレの所に行きましょう。アッシュの手が汚れます」
ヴァンはアッシュにかけられたエクスプロードと暴力よりもルークの言葉の方が堪えたらしい。ルークは証拠隠滅のため一応ヴァンにキュアをかけるとアッシュを連れて何事もなかったかのように去って行った。
その後、ルークはこの軍服を断って更に凄いのがきたら嫌なので、素直に着ることにしたのだが、アッシュは何時も渋い顔をしていたと言う。
「『はじめまして』アッシュ。グレースと言います。よろしく」
どう聞いた所でルークの声だ。と言っても喋り方が違うので大分違った印象を受ける。おそらくヴァン辺りは気付けないだろう。それに音譜帯に居た頃ルークは声帯模写を見よう見真似で習得していた。この声は『レム』の声だ。腰でクロスするように二本の剣をさしている。
「…はじめまして……グレース」
そういってアッシュもグレースに手を差し出した。そのまま強く握って抱き寄せる。正直な所、顔の仮面は大変邪魔だ。
『なにしてんた、屑。こんなとこで』
『だってアッシュに先手打たれたから仕返し。ちゃんと勉強はしたよ』
実際ルークと別れて行動し始めてから半年が経っている。ルークはもの覚えが早いので、本当に半年で基礎はマスターしたのだろう。この分だと、時間があまって他の専門知識迄習得していそうだ。
「よろしくお願いしますね、アッシュ。あ、ラルゴは何処にいますか?」
ルークは手に大きな板を抱えている。
「今は自室にいるはずだ。何か用でもあるのか?」
『ディストの次はラルゴ丸め込むんだ』
アッシュはルークの手の中の物を見て成る程と言った。ルークが持っていたのはナタリアの肖像画であった。
…………………………………………………………………………………………………………
ラルゴはとても困っていた。それはグレースという少年(なんでもアッシュの補佐官らしい)が置いて行った、キムラスカ・ランバルディアの王女、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの肖像画だった。グレースもアッシュもラルゴの事情を知っているようで、ニッコリ笑って「受け取れ」と言ってきたのだ。
「アッシュ…笑い方がカンタビレに似てきたな…」
何だか底の見えない黒い笑みだ。導師イオンもよくやる。特にアリエッタを虐めた人間には容赦ない。とても病気には見えない感じだ。実際に病気かどうかはモースしか知らないのだが。
「メリル…」
母親に似てとてもかわいらしい少女の肖像画をラルゴはぎゅっと抱きしめると、それを壁に掛けた。グレースは定期的にナタリアの近況を聞かせるとも言い残していた。この際そのことばに甘える事にしよう。で、二人がヴァンを虐めて(?)遊んでいるのにも目をつぶることにした。何事も首を突っ込み過ぎるのはいけないのだ。
後日、ヴァンが持ってきたグレース用の軍服にアッシュがキレてヴァンはしこたま殴られていたが、ラルゴはそれは見なかった事にした。あれはヴァンが悪い。
Next→ダアト・ローレライ教団総本山
「グレース、アッシュの補佐役用の軍服を用意した」
そう言ってアッシュの隣を歩くグレースをヴァンが呼び止めたのは二人が肩慣らしにこっそりザレッホ火山に忍び込んで魔物退治をしてきた帰りであった。因みにグレースはカンタビレの『弟子』であるためヴァンは無条件でアッシュの隣にいることを許している。カンタビレは《大詠師派》ではないが、仕事はとても出来るし、アッシュはカンタビレに懐いて(?)いて、その弟子のグレースとも面識があるようだった。それに信託の盾にはアッシュと同年代の兵士は少ない。友人にもピッタリだと判断したらしい。
「ラインはアッシュの髪の色で《私》が作ったが」
アッシュは物凄く嫌な予感がした。ルークはよく解らずキョトンとしている。ルークはコーラル城のあの部屋がヴァンの仕業だとは知らないのだ。因みにあのあとアッシュが知ったのは六神将の軍服は全てヴァンが一つ一つ手縫いで仕上げた代物だったということだ。仕上がっていないときはアッシュは他の信託の盾兵と同じような物を着ていたのだが、やはり着慣れたものの方が落ち着く。その時聞いて後悔したのだった。知りたくなかったと。
「グレースも脚のラインが綺麗だからニーハイブーツも用意した」
「もってなんだもって」
「お前の脚も綺麗だろう」
ヴァンの変態臭い発言にアッシュはぞっとしながら、隣に居るルークを見た。ルークはアッシュの脚を見て「確かに綺麗な脚線美ですよね」とか言っている。
「採寸を合わせたいから着替えなさい」
ヴァンはそう言って何処からともなくお着替えボックスを取り出した。
「……ここで…ですか?」
「嫌なら部屋で着替えてきなさい」
そう言うとヴァンはルークに軍服の入った袋を渡すと直ぐ近くにある《グレースに与えられた私室》を指した。
「…わかりました。アッシュ、直ぐ戻ってきますから」
『ヴァンでも虐めて待ってて』
「…あぁ」
回線で囁かれた言葉に、アッシュは頷くと、ルークを見送った。
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暫くして、ルークがまた回線を繋いできた。
『どうした』
『…ぅん…、アッシュ…出てきてもビックリしないでね』
カチャリとドアノブの回る音がして、ルークが部屋から出てきた。アッシュはルークを見た瞬間ボッとまるで顔から火が出るくらい真っ赤になった。
「グレース、キツイ所はないか」
「大丈夫です」
ルークの心の中のカッコイイヴァン師匠像は完璧に崩壊していた。個人的にはこの服装は大問題だが、隠密活動するにはこちらの方がグレース=ルークだとばれにくいといったらばれにくい。
「うむ、私の目に狂いはなかった」
「100%狂ってんじゃねーか!屑がぁー!」
アッシュによるエクスプロードがヴァンに直撃した。ヴァンがルークに渡したのは、「アリエッタの軍服に近い物+スパッツ+アッシュの外套に似た物+ニーハイブーツ」完璧に変態だ。アッシュはエクスプロードが命中した後もヴァンの襟首を掴んで顔をたこ殴りにしていた。
「お前も何か言え!」
「はい。ヴァン総長がこんなに変態だとは思いませんでした。アッシュ、こんな人間としてダメな総長は置いておいて、カンタビレの所に行きましょう。アッシュの手が汚れます」
ヴァンはアッシュにかけられたエクスプロードと暴力よりもルークの言葉の方が堪えたらしい。ルークは証拠隠滅のため一応ヴァンにキュアをかけるとアッシュを連れて何事もなかったかのように去って行った。
その後、ルークはこの軍服を断って更に凄いのがきたら嫌なので、素直に着ることにしたのだが、アッシュは何時も渋い顔をしていたと言う。
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バチカルの屋敷に着くまでルークは馬車の中で眠っていた。このガタゴトという揺れは実に眠気を誘うのだ。ルークの枕になっているのはコーラル城にあった巨大テディベアだ。
「ルーク様、着きましたよ」
「ぅー…?」
ルークは唸ると声をかけてきた少年を見上げた。
「…ガイ……」
「はい?なんですか?」
「後で…部屋、来て………ぐぅ」
軽く寝言と区別が付かない感じだ。ガイはルークはどうしてしまったのだろうと頭を抱えて悩んだが、結論は出なかったのでルークを抱き抱えて部屋に連れて行くことにした。
…………………………………………………………………………………………………………
『アッシュ、アッシュ聞こえる?』
『あぁ、何だ?』
『バチカル着いたよ』
『そうか、こちらも今ダアトに着いた所だ』
『ローレライは居る?』
『いや?モースに僻地の視察命じられてどっか行った』
ルークはクマに向かって何か話し掛けている。ガイは今度こそルークを医者に見せるべきだと思った。明らかにどうかしてしまっている。
「あ、ガイ。何時から居たんだ?」
ルークはベッドから降りてガイに近寄るが、その歩き方は少しよたよたしていて危なっかしい。
「少し前からですが」
「……敬語。次使ったら父上に言うぜ?」
「なにをだ?」
「ガイラ…むぐっ」
「何処でそれを!?」
「俺はライガを逆さまに呼んだだけだぜ?」
ルークはにたりと笑った。とことん黒い笑みにガイは、あぁ、俺は育て方を間違っただろうかと、育ててもいないのにそう思ってしまった。
「でもな、ガイ復讐なんてなにも生まないよ。苦しいだけだ」
「ルーク?」
「多分、俺はこれから軟禁される。『マルクト』に誘拐されちまったからな。そろそろ伯父上から命が下されるはずだし」
「ルーク…」
ガイはルークを疑わしげな目で見ている。そんなガイにルークは笑って見せた。
「ルークはガイのこと大好きだからな」
「ルーク…今のは文法としてへんだぞ?」
「いいんだって、これで。それよりガイ、俺所々記憶抜けてんだ、だから勉強し直したいんだけど基礎から教えてくんない?」
どうやら勤勉な所は変わってないらしいが、やっぱりどこかおかしかった。そんな違和感をひしひしと感じつつガイはルークに勉強の基礎を教える事になった。
ガイがルークのあまりの黒さにねを上げるのはそれから数時間後のことである。
Next→ダアト・信託の盾総本部
「や、ルーク元気に勉強してるね」
「カンタビレ!」
「え?カンタビレって信託の盾のカンタビレか!?」
ガイは夕方近くになってルークの部屋の窓から入って来た男にうろたえた。その前に警備の人間は何をしているのか…。
「そうだよ、はじめましてガイ様。まぁそれはさておきルーク、御所望の品だ」
そういってカンタビレがルークに手渡したのは赤毛の猫(!?)となんかうねうねした生き物の入った袋だ。
「ルーク!?なんだその変なナマモノは!?」
「……俺もわかんない」
ルークも心なし青ざめている。まぁ、確かにこんな何の生き物かさえわからない生き物を手渡されれば誰だってうろたえるだろう。
『じゃあ、ガイ様ちょーっと席外してくんない?』
「あ、『はい』」
カンタビレに言われたガイはルークの部屋から出ていく。ルークはカンタビレをじっとみた。
「ガイに何したんだよ」
「トイレに行ってもらいました。さて、ルーク本題だよ」
カンタビレもといローレライはルークの腕から猫を抱き上げると猫の額を引っ掻いた。毛皮に見えていたカツラがとれ、本来の色であろうミルクティー色が姿を表した。
「はい、カツラ。そっちは染め粉だよ」
うごうごと蠢く謎の生き物を引きはがすと中から白い粉の入った瓶が出てきた。
「ルークが何色に染める気か聞かなかったから万能なの音譜帯に取りに行ってきたんだ」
「ありがとう、ロ……カンタビレ」
カンタビレと呼ばないと駄目ー返事しないもーんとか言われ(ごねられた)たので、ルークは言い直した。ローレライは満足そうだ。
「じゃあ、また今度ね。俺に回線繋いでくれれば迎えに来るから」
カンタビレが窓から出ていくのとガイが部屋に戻ってくるのはほぼ同時だった。
「…ルーク、その毛玉…」
ガイはベッドにこんもりと山になっている赤い毛玉を指指して問い掛けた。
「あ、うん撫でてたらごっそり抜けてさぁ、とりあえず一まとめにしといた。可哀相だから後で籠の下にひくよ」
ルークは猫を撫でながらそういった。
・余談ですが猫の名前はヴァンへの嫌がらせも込めて「メシュティアリカ」
「ルーク様、着きましたよ」
「ぅー…?」
ルークは唸ると声をかけてきた少年を見上げた。
「…ガイ……」
「はい?なんですか?」
「後で…部屋、来て………ぐぅ」
軽く寝言と区別が付かない感じだ。ガイはルークはどうしてしまったのだろうと頭を抱えて悩んだが、結論は出なかったのでルークを抱き抱えて部屋に連れて行くことにした。
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『アッシュ、アッシュ聞こえる?』
『あぁ、何だ?』
『バチカル着いたよ』
『そうか、こちらも今ダアトに着いた所だ』
『ローレライは居る?』
『いや?モースに僻地の視察命じられてどっか行った』
ルークはクマに向かって何か話し掛けている。ガイは今度こそルークを医者に見せるべきだと思った。明らかにどうかしてしまっている。
「あ、ガイ。何時から居たんだ?」
ルークはベッドから降りてガイに近寄るが、その歩き方は少しよたよたしていて危なっかしい。
「少し前からですが」
「……敬語。次使ったら父上に言うぜ?」
「なにをだ?」
「ガイラ…むぐっ」
「何処でそれを!?」
「俺はライガを逆さまに呼んだだけだぜ?」
ルークはにたりと笑った。とことん黒い笑みにガイは、あぁ、俺は育て方を間違っただろうかと、育ててもいないのにそう思ってしまった。
「でもな、ガイ復讐なんてなにも生まないよ。苦しいだけだ」
「ルーク?」
「多分、俺はこれから軟禁される。『マルクト』に誘拐されちまったからな。そろそろ伯父上から命が下されるはずだし」
「ルーク…」
ガイはルークを疑わしげな目で見ている。そんなガイにルークは笑って見せた。
「ルークはガイのこと大好きだからな」
「ルーク…今のは文法としてへんだぞ?」
「いいんだって、これで。それよりガイ、俺所々記憶抜けてんだ、だから勉強し直したいんだけど基礎から教えてくんない?」
どうやら勤勉な所は変わってないらしいが、やっぱりどこかおかしかった。そんな違和感をひしひしと感じつつガイはルークに勉強の基礎を教える事になった。
ガイがルークのあまりの黒さにねを上げるのはそれから数時間後のことである。
Next→ダアト・信託の盾総本部
「や、ルーク元気に勉強してるね」
「カンタビレ!」
「え?カンタビレって信託の盾のカンタビレか!?」
ガイは夕方近くになってルークの部屋の窓から入って来た男にうろたえた。その前に警備の人間は何をしているのか…。
「そうだよ、はじめましてガイ様。まぁそれはさておきルーク、御所望の品だ」
そういってカンタビレがルークに手渡したのは赤毛の猫(!?)となんかうねうねした生き物の入った袋だ。
「ルーク!?なんだその変なナマモノは!?」
「……俺もわかんない」
ルークも心なし青ざめている。まぁ、確かにこんな何の生き物かさえわからない生き物を手渡されれば誰だってうろたえるだろう。
『じゃあ、ガイ様ちょーっと席外してくんない?』
「あ、『はい』」
カンタビレに言われたガイはルークの部屋から出ていく。ルークはカンタビレをじっとみた。
「ガイに何したんだよ」
「トイレに行ってもらいました。さて、ルーク本題だよ」
カンタビレもといローレライはルークの腕から猫を抱き上げると猫の額を引っ掻いた。毛皮に見えていたカツラがとれ、本来の色であろうミルクティー色が姿を表した。
「はい、カツラ。そっちは染め粉だよ」
うごうごと蠢く謎の生き物を引きはがすと中から白い粉の入った瓶が出てきた。
「ルークが何色に染める気か聞かなかったから万能なの音譜帯に取りに行ってきたんだ」
「ありがとう、ロ……カンタビレ」
カンタビレと呼ばないと駄目ー返事しないもーんとか言われ(ごねられた)たので、ルークは言い直した。ローレライは満足そうだ。
「じゃあ、また今度ね。俺に回線繋いでくれれば迎えに来るから」
カンタビレが窓から出ていくのとガイが部屋に戻ってくるのはほぼ同時だった。
「…ルーク、その毛玉…」
ガイはベッドにこんもりと山になっている赤い毛玉を指指して問い掛けた。
「あ、うん撫でてたらごっそり抜けてさぁ、とりあえず一まとめにしといた。可哀相だから後で籠の下にひくよ」
ルークは猫を撫でながらそういった。
・余談ですが猫の名前はヴァンへの嫌がらせも込めて「メシュティアリカ」
「じゃあ、ルークにはこれを渡しておこうね」とローレライは懐から黒いマニキュアを取り出した。
「何コレ」
「アッシュはバチカル戻らないつもりなんだって、それというのもルークにお勉強をしてもらうためなんだけど」
なんでもアッシュいわく、ルークは基礎知識に欠落があるからもう少ししっかり勉強をしたほうがいいというのと、ガイやナタリアの前でボロを出さない自信がないからということだった。
「むぅ…アッシュに先手打たれた」
「そこでこれの出番」
ローレライはマニキュアを指して笑う。
「ルーク髪の毛染めるつもりでしょ?」
「うん、なんで?」
「何となくね。そのためにはカツラとか信託の盾の軍服とかいるわけだ」
「うんうん」
ルークはローレライの言葉に相槌を打ちながら、マニキュアをまじまじと見る。
「カツラはと染め粉は後で届けられるんだけど信託の盾の軍服はそう簡単には手に入らない」
「それで?」
「これは『称号』とおんなじ役目をしてくれるんだ」
「つまり『タオラー』とかと一緒なんだな?」
「そういうこと。偽名は決めてる?」
「グレース」
ローレライは苦笑するとルークの頭を撫でた。
「アッシュが知ったらビックリするね」
「そうだね」
暫くまったりした空気が流れたが、何だか急に下が騒がしくなった。
「あ、どうやらタイムアップみたいだ。じゃあルーク、上手くやるんだよ」
ローレライはひらりと窓から飛び降りて消えてしまった。
「ルーク様!ご無事で……」
ルークを発見した兵士は倒れたくなった。ルークが居る部屋はファンシー過ぎて心臓に悪い。ルークはきゃあきゃあとテディベアにじゃれて遊んでいる。一見微笑ましいが、あの『ルーク』がである。兵士は他の兵士が到着するまで入口で固まったままであった。
Next→
・マニキュアを塗って一定条件こなすと魔女っ娘みたいに変身します(苦笑)
・そして称号で髪色変えられるのに気付かないルークと言わないローレライ…(汗)
「何コレ」
「アッシュはバチカル戻らないつもりなんだって、それというのもルークにお勉強をしてもらうためなんだけど」
なんでもアッシュいわく、ルークは基礎知識に欠落があるからもう少ししっかり勉強をしたほうがいいというのと、ガイやナタリアの前でボロを出さない自信がないからということだった。
「むぅ…アッシュに先手打たれた」
「そこでこれの出番」
ローレライはマニキュアを指して笑う。
「ルーク髪の毛染めるつもりでしょ?」
「うん、なんで?」
「何となくね。そのためにはカツラとか信託の盾の軍服とかいるわけだ」
「うんうん」
ルークはローレライの言葉に相槌を打ちながら、マニキュアをまじまじと見る。
「カツラはと染め粉は後で届けられるんだけど信託の盾の軍服はそう簡単には手に入らない」
「それで?」
「これは『称号』とおんなじ役目をしてくれるんだ」
「つまり『タオラー』とかと一緒なんだな?」
「そういうこと。偽名は決めてる?」
「グレース」
ローレライは苦笑するとルークの頭を撫でた。
「アッシュが知ったらビックリするね」
「そうだね」
暫くまったりした空気が流れたが、何だか急に下が騒がしくなった。
「あ、どうやらタイムアップみたいだ。じゃあルーク、上手くやるんだよ」
ローレライはひらりと窓から飛び降りて消えてしまった。
「ルーク様!ご無事で……」
ルークを発見した兵士は倒れたくなった。ルークが居る部屋はファンシー過ぎて心臓に悪い。ルークはきゃあきゃあとテディベアにじゃれて遊んでいる。一見微笑ましいが、あの『ルーク』がである。兵士は他の兵士が到着するまで入口で固まったままであった。
Next→
・マニキュアを塗って一定条件こなすと魔女っ娘みたいに変身します(苦笑)
・そして称号で髪色変えられるのに気付かないルークと言わないローレライ…(汗)
「カンタビレ…って信託の盾のか?」
アッシュが恐る恐る尋ねるとローレライはあっさりと「うん、そうだよ」と言った。実に軽い感じだ。
「今ここには師団長が全員召集されててね、他の六神将もいるよ。カンタビレって元々俺が地殻から外を見るために創った行動用の躯なんだ」
「あぁ、道理でしょっちゅう居なかった訳だ…俺に六神将が回ってくるくらいに…」
アッシュは溜息を吐いた。ルークはそんなアッシュを見ながらきょとんとする。
「まぁ、とりあえずまだ一日目だ。ヴァン達が俺を連れて此処を離れたのは誘拐うんぬんから二週間後だったから、今のうちに丸め込める奴は丸め込もう」
「ならディストからがいいんじゃないか?シンクはまだ作られてないし、アリエッタもオリジナルイオンの所居るはずだし」
「しっ、ルーク。誰か来る」
足音はしないが、人の近付いてくる気配がする。アッシュとルークは緊張で息を詰めたがローレライはのほほんとしている。
「ルーク、起きていますか?」
「あ、鼻タレディスト」
「きーっ、誰が鼻タレですかっ!!ってなんでレプリカルークはそれを知ってるんですか?」
扉を開けてはいってきたのは、ディストだった。
「ディスト、ドアを閉めてこっちきなよ」
「カンタビレ、こんなところに居たんですか。リグレットが探していましたよ」
「そーなの?解った行くよ。まぁ、どうせルークがヴァンを虐めたからいじけてどっか行ったの探す人手が欲しだけだろうとは思うけど。じゃあそういうことだ二人とも」
ローレライはわしわしとアッシュとルークの頭を撫でると、ひらひらと手を振って部屋を出ていってしまった。後には赤毛二人とディストが残される。
「ルーク」
「?」
「何であれを知っているんですか?」
「それよりさ、ディスト!俺とアッシュの同調フォンスロットあけてくれよ」
「…おかしなレプリカですね。普通スラスラと喋れるようになるまで暫く掛かるはずなんで…」
「あんまり詮索すると言うよ?」
「何を誰にですか」
「「ジェイド(鬼畜眼鏡)にネビリム先生のこととかいろいろ(な)」」
赤毛二人の攻撃にディストは顔を青ざめる。ダラダラと冷汗をかき、視線はどこか明後日の方を向いている。
「で、どうするんだ?」
「二人とも音機関の所まで来て下さい。ルークは歩けますか?」
「試してないからわかんない、アッシュ手貸して」
アッシュはルークに手を差し出し、ルークはそれに掴まって地に足を付ける。しかし直ぐにへたりこんでしまった。
「た…立てない」
「しかたねぇな」
立てないルークをアッシュは姫抱きで抱え上げるとスタスタとディストの元まで行く。
「わわっ!?アッシュ!?」
「我慢しろ、少なくともこの部屋よりはマシだろ」
「………ぅん」
確かにこんな部屋に居るよりかはアッシュにお姫様抱っこされている方がマシである。
「じゃ、ディストよろしく」
ディストは恐い恐い幼なじみを彷彿とさせる赤毛二人の笑みに耐えながら、あたふたと音機関を起動させるのであった。
Next→バチカル、ファブレ公爵家
「あ、ディスト」
「なんです、カンタビレ」
カンタビレはにっこりと笑いながらディストに近寄って行った。ディストはそういえば赤毛二人の笑い方はカンタビレそっくりだなと思いつつ振り向く。
『ディストはさっき何してたのかな?』
「何って…………?『さっき私は部屋でレプリカルークの資料を読んでいましたけど』」
「うん、なら『いいや』」
カンタビレの瞳が猫のように細まりディストは「全く、なんなんですか」と文句を宣いながら部屋に戻って行った。
「うん、これでよし。と」
カンタビレはディストの記憶の書き換えが上手くいったことに満足したのか、再びヴァンを探し始めるのだった。
アッシュが恐る恐る尋ねるとローレライはあっさりと「うん、そうだよ」と言った。実に軽い感じだ。
「今ここには師団長が全員召集されててね、他の六神将もいるよ。カンタビレって元々俺が地殻から外を見るために創った行動用の躯なんだ」
「あぁ、道理でしょっちゅう居なかった訳だ…俺に六神将が回ってくるくらいに…」
アッシュは溜息を吐いた。ルークはそんなアッシュを見ながらきょとんとする。
「まぁ、とりあえずまだ一日目だ。ヴァン達が俺を連れて此処を離れたのは誘拐うんぬんから二週間後だったから、今のうちに丸め込める奴は丸め込もう」
「ならディストからがいいんじゃないか?シンクはまだ作られてないし、アリエッタもオリジナルイオンの所居るはずだし」
「しっ、ルーク。誰か来る」
足音はしないが、人の近付いてくる気配がする。アッシュとルークは緊張で息を詰めたがローレライはのほほんとしている。
「ルーク、起きていますか?」
「あ、鼻タレディスト」
「きーっ、誰が鼻タレですかっ!!ってなんでレプリカルークはそれを知ってるんですか?」
扉を開けてはいってきたのは、ディストだった。
「ディスト、ドアを閉めてこっちきなよ」
「カンタビレ、こんなところに居たんですか。リグレットが探していましたよ」
「そーなの?解った行くよ。まぁ、どうせルークがヴァンを虐めたからいじけてどっか行ったの探す人手が欲しだけだろうとは思うけど。じゃあそういうことだ二人とも」
ローレライはわしわしとアッシュとルークの頭を撫でると、ひらひらと手を振って部屋を出ていってしまった。後には赤毛二人とディストが残される。
「ルーク」
「?」
「何であれを知っているんですか?」
「それよりさ、ディスト!俺とアッシュの同調フォンスロットあけてくれよ」
「…おかしなレプリカですね。普通スラスラと喋れるようになるまで暫く掛かるはずなんで…」
「あんまり詮索すると言うよ?」
「何を誰にですか」
「「ジェイド(鬼畜眼鏡)にネビリム先生のこととかいろいろ(な)」」
赤毛二人の攻撃にディストは顔を青ざめる。ダラダラと冷汗をかき、視線はどこか明後日の方を向いている。
「で、どうするんだ?」
「二人とも音機関の所まで来て下さい。ルークは歩けますか?」
「試してないからわかんない、アッシュ手貸して」
アッシュはルークに手を差し出し、ルークはそれに掴まって地に足を付ける。しかし直ぐにへたりこんでしまった。
「た…立てない」
「しかたねぇな」
立てないルークをアッシュは姫抱きで抱え上げるとスタスタとディストの元まで行く。
「わわっ!?アッシュ!?」
「我慢しろ、少なくともこの部屋よりはマシだろ」
「………ぅん」
確かにこんな部屋に居るよりかはアッシュにお姫様抱っこされている方がマシである。
「じゃ、ディストよろしく」
ディストは恐い恐い幼なじみを彷彿とさせる赤毛二人の笑みに耐えながら、あたふたと音機関を起動させるのであった。
Next→バチカル、ファブレ公爵家
「あ、ディスト」
「なんです、カンタビレ」
カンタビレはにっこりと笑いながらディストに近寄って行った。ディストはそういえば赤毛二人の笑い方はカンタビレそっくりだなと思いつつ振り向く。
『ディストはさっき何してたのかな?』
「何って…………?『さっき私は部屋でレプリカルークの資料を読んでいましたけど』」
「うん、なら『いいや』」
カンタビレの瞳が猫のように細まりディストは「全く、なんなんですか」と文句を宣いながら部屋に戻って行った。
「うん、これでよし。と」
カンタビレはディストの記憶の書き換えが上手くいったことに満足したのか、再びヴァンを探し始めるのだった。
ガンガンと頭に響く機械音で『ルーク』は目を覚ました。自分はここを知っている。
「…コーラル城?」
「目を覚ましたか『アッシュ』」
「ヴァン?」
見渡すと最近見たものよりいくらか綺麗な音機関の上に『ルーク』は横たわっていた。それに目の前の師であり上司であり敵であったヴァンデスデルカは記憶のものよりも若い。
「まだルークは眠っている。見に行くか?」
「なんでルークは寝てるんだ」
ヴァンの言葉に『ルーク』はいやアッシュは混乱する。ここはそもそも何時なのだろう?
「…『ルーク』何故『アッシュ』と言う名に疑問を抱かぬ?」
「………解らない」
本当は解っているが。それは彼や周りから7年間呼ばれ続けた名だからだ。
「まぁいい」
ヴァンはアッシュの背をぽんと叩いて付いてくるように促した。そういえば前にもこんな事があったなとアッシュは大分思考回路の戻ってきた頭で考えた。若いヴァン、崩れた場所の少ないコーラル城。これから弾き出される答えは実に簡単だ。
「(逆行してきたのか…)」
考え事をしながらヴァンの後ろを付いていくと、一つの部屋の前で止まった。ドアを開けるとアッシュは無性に逃げたくなるような衝動に駆られた。
「…師匠、この部屋の飾りは?」
「趣味だ」
知りたくなかったこんな趣味。アッシュはそう思った。が、よくよく考えればリグレットやアリエッタにあんな軍服を支給するような人間である。多少趣味が乙女で変態臭いのは否めないだろう。部屋は一面ピンクと赤そして白で統一され、子供1人分膨らんでいるキングサイズの天涯付きベッドには大きな大人がやっと抱えられるくらいのテディベア。ご丁寧にリボンまで着いている。
「…レプリカ…可哀相に」
「アッシュ何か言ったか?」
「別に」
アッシュとヴァンが漫才のようなやり取りをしていると、人の気配に気付いたのか、ベッドの膨らみがもぞもぞと動いた。
「……ぅー?」
目覚めたルークは起き上がって倒れたくなった。こんな部屋で寝てたら神経が侵される気がすると。
「目が覚めたようだなルーク」
ヴァンがベッドと近付いていく。アッシュも扉を閉めヴァンの後ろに続く。
「ルーク、アッシュだ」
「あー?」
「レプリカ…」
「あっしゅーっvv」
ルークはぎゅっとアッシュに抱き着いた。ルークが着ているのは生成りのロングTシャツだ。
「私は」
「…近寄んな。キモ髭」
アッシュに抱き着いていたルークが真顔でボソリと言った。ヴァンの頭の中で何かが壊れた音がした。つまりはブロークンハートな音だ。ヴァンはそのまま後ずさるとドアを凄い勢いで開けて泣きながら駆け出して行ってしまった。
「ルーク…だな?」
「アッシュだよね?」
「まーこれで役者は揃った訳だね」
扉の所から声がした。二人が振り向くとそこには飴色の光の屈折で紅にも緋にも見える髪と深海の色をした眼をもつ痩躯な男が寄り掛かって立っていた。
「「ローレライ!」」
「あー、今は《カンタビレ》ね」
にっこり笑うその男は第六師団長カンタビレであった。
Next→コーラル城2
「…コーラル城?」
「目を覚ましたか『アッシュ』」
「ヴァン?」
見渡すと最近見たものよりいくらか綺麗な音機関の上に『ルーク』は横たわっていた。それに目の前の師であり上司であり敵であったヴァンデスデルカは記憶のものよりも若い。
「まだルークは眠っている。見に行くか?」
「なんでルークは寝てるんだ」
ヴァンの言葉に『ルーク』はいやアッシュは混乱する。ここはそもそも何時なのだろう?
「…『ルーク』何故『アッシュ』と言う名に疑問を抱かぬ?」
「………解らない」
本当は解っているが。それは彼や周りから7年間呼ばれ続けた名だからだ。
「まぁいい」
ヴァンはアッシュの背をぽんと叩いて付いてくるように促した。そういえば前にもこんな事があったなとアッシュは大分思考回路の戻ってきた頭で考えた。若いヴァン、崩れた場所の少ないコーラル城。これから弾き出される答えは実に簡単だ。
「(逆行してきたのか…)」
考え事をしながらヴァンの後ろを付いていくと、一つの部屋の前で止まった。ドアを開けるとアッシュは無性に逃げたくなるような衝動に駆られた。
「…師匠、この部屋の飾りは?」
「趣味だ」
知りたくなかったこんな趣味。アッシュはそう思った。が、よくよく考えればリグレットやアリエッタにあんな軍服を支給するような人間である。多少趣味が乙女で変態臭いのは否めないだろう。部屋は一面ピンクと赤そして白で統一され、子供1人分膨らんでいるキングサイズの天涯付きベッドには大きな大人がやっと抱えられるくらいのテディベア。ご丁寧にリボンまで着いている。
「…レプリカ…可哀相に」
「アッシュ何か言ったか?」
「別に」
アッシュとヴァンが漫才のようなやり取りをしていると、人の気配に気付いたのか、ベッドの膨らみがもぞもぞと動いた。
「……ぅー?」
目覚めたルークは起き上がって倒れたくなった。こんな部屋で寝てたら神経が侵される気がすると。
「目が覚めたようだなルーク」
ヴァンがベッドと近付いていく。アッシュも扉を閉めヴァンの後ろに続く。
「ルーク、アッシュだ」
「あー?」
「レプリカ…」
「あっしゅーっvv」
ルークはぎゅっとアッシュに抱き着いた。ルークが着ているのは生成りのロングTシャツだ。
「私は」
「…近寄んな。キモ髭」
アッシュに抱き着いていたルークが真顔でボソリと言った。ヴァンの頭の中で何かが壊れた音がした。つまりはブロークンハートな音だ。ヴァンはそのまま後ずさるとドアを凄い勢いで開けて泣きながら駆け出して行ってしまった。
「ルーク…だな?」
「アッシュだよね?」
「まーこれで役者は揃った訳だね」
扉の所から声がした。二人が振り向くとそこには飴色の光の屈折で紅にも緋にも見える髪と深海の色をした眼をもつ痩躯な男が寄り掛かって立っていた。
「「ローレライ!」」
「あー、今は《カンタビレ》ね」
にっこり笑うその男は第六師団長カンタビレであった。
Next→コーラル城2
……我が愛しの半身達よ、望むことは?
ローレライがそう尋ねてきたのは音譜帯での暮らしに二人が漸く慣れて来た頃だった。
「特にはないな」
「俺もー。あ、でも約束」
「それはお前達が大爆発を起こしたから問題ないよ」
下界の人間が来ることの出来ない音譜帯は実はさほど下界との違いはない。ただ居るのがローレライやレム等といった音素集合体だけと言うだけだ。アッシュとルークはローレライの同位体つまりローレライと扱いは一緒なので音譜帯でも暮らしていけている。
「んーでも今一実感湧かないんだよなー…」
「確かに。いくら大爆発で俺とこいつが融合したとしてもそれは『アッシュ』でも『ルーク』でもない《ルーク・フォン・ファブレ》だしな」
「それでもお前達と記憶の共有はあるのだしお前達がここでのんびり過ごすことは悪いことじゃないだろう?」
一ヶ月程前大爆発の影響で不安定になっていた《ルーク》の躯が安定し提唱されている大爆発の基準の通りアッシュとルークは記憶を《ルーク》に与えた。あの場で死んだ自分達が帰るなんて事は考えていなかったからだ。それにきっと辛くて戻れないだろう。彼等を悲しませたのは紛れも無い事実だ。
「まだ、心残りがあるんだね」
「ない…とは言い切れないな」
「俺も、アクゼリュスの事とかイオンの事とか…あーもぉ!言い出したらきりがねーっ!」
仲間達の事はきっと《ルーク》が上手くやるだろう。何せ彼の中にはアッシュとルークが居る。《ルーク》自身には大爆発の間の記憶は無いので純粋にローレライが力を貸して仲間の元に帰れたのだと言うことにしてある。あの躯は第七音素だけで出来ているわけでは無いので、レプリカのように乖離することは無い。心配な事等なかった。
「なら、行っておいで」
「は?」
「ローレライ?」
ローレライはにっこり笑うと二人の頭に手を乗せた。まばゆい閃光が二人の目を焼く。
「救って見せて、俺も協力するから」
最後に聞こえたのはそんな言葉だった。
Next→コーラル城
ローレライがそう尋ねてきたのは音譜帯での暮らしに二人が漸く慣れて来た頃だった。
「特にはないな」
「俺もー。あ、でも約束」
「それはお前達が大爆発を起こしたから問題ないよ」
下界の人間が来ることの出来ない音譜帯は実はさほど下界との違いはない。ただ居るのがローレライやレム等といった音素集合体だけと言うだけだ。アッシュとルークはローレライの同位体つまりローレライと扱いは一緒なので音譜帯でも暮らしていけている。
「んーでも今一実感湧かないんだよなー…」
「確かに。いくら大爆発で俺とこいつが融合したとしてもそれは『アッシュ』でも『ルーク』でもない《ルーク・フォン・ファブレ》だしな」
「それでもお前達と記憶の共有はあるのだしお前達がここでのんびり過ごすことは悪いことじゃないだろう?」
一ヶ月程前大爆発の影響で不安定になっていた《ルーク》の躯が安定し提唱されている大爆発の基準の通りアッシュとルークは記憶を《ルーク》に与えた。あの場で死んだ自分達が帰るなんて事は考えていなかったからだ。それにきっと辛くて戻れないだろう。彼等を悲しませたのは紛れも無い事実だ。
「まだ、心残りがあるんだね」
「ない…とは言い切れないな」
「俺も、アクゼリュスの事とかイオンの事とか…あーもぉ!言い出したらきりがねーっ!」
仲間達の事はきっと《ルーク》が上手くやるだろう。何せ彼の中にはアッシュとルークが居る。《ルーク》自身には大爆発の間の記憶は無いので純粋にローレライが力を貸して仲間の元に帰れたのだと言うことにしてある。あの躯は第七音素だけで出来ているわけでは無いので、レプリカのように乖離することは無い。心配な事等なかった。
「なら、行っておいで」
「は?」
「ローレライ?」
ローレライはにっこり笑うと二人の頭に手を乗せた。まばゆい閃光が二人の目を焼く。
「救って見せて、俺も協力するから」
最後に聞こえたのはそんな言葉だった。
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