気まぐれにNL・BLetc.健全から危ないモノまで。
今のとこメインはDMCとTOA。
「ルーク・フォン・ファブレ、お前らが誘拐に失敗したルーク様だよ」
タルタロスの一室で、ルークはどっかり椅子に座って話し出した。ルーク護送中、近くにいなかったアニスはルークが公爵子息だと知り、はしゃいでいるが、一方ジェイドは精神的に疲れているのかぐったりしている。
「俺の地位がいるんだろ?協力してやるよ」
ルークは不敵に笑い、ジェイドは苦笑いを浮かべる。その前になんで説明もしていないのにこんな事を言うのかジェイドにはさっぱり解らない。
「ピオニー陛下の懐刀が戦争でも無いのにこんなとこにいるなんておかしいだろ」
「それもそうね」
「ルーク様ってば、あったまいぃ!」
ティアはルークに同意する。アニスはきゃいきゃいはしゃぎ過ぎだ。
「キムラスカに和平の親書を届けに来たんですよ」
「伯父上に取り次げばいいんだな」
「お願いします」
「へいへい」
ルークはやる気なさ気にジェイドに返事する。その時キーンと耳鳴りがした。回線が繋がる時の頭痛は無くなったが、繋がる瞬間の耳鳴りだけは消えなかった。まぁこれはこれで使えるが。
『もうすぐタルタロスを強襲する、どじるなよ?』
『わかってるよ』
ルークはアッシュに返事をすると風に当たると言って外に出たイオンを追った。
「うわー…すげぇ数」
外に既にイオンの姿はなく、連れ去られた後のようだった。タルタロスの上空には無数のグリフィンが飛んでおりライガがその背に乗っている。
「さて、と中戻るか」
まずはラルゴを探して封印術を壊さなければならない。封印術にかかったジェイドなんて唯の陰険なおっさんである。恐らくラルゴはまだだろう。中に戻るとタルタロスが大きく揺れた。ジェイドがブリッジと連絡をとると巨大な鎌が襲ってきた。
「大人しくしていて貰おうか」
ジェイドの槍が信託の盾兵をなぐ。出口を塞いで笑っていたのはラルゴだった。ラルゴはルークを一瞥するとジェイドに視線を戻し、封印術を取り出した。ルークがポケットを漁っているのに気付かず。ラルゴが軽く封印術を投げる。ジェイドに当たるかと思われたそれは思わぬ物で軌道を反らされ床に転がった。
「大当りぃ~♪」
ラルゴが驚いてルークと床に転がる封印術を交互に見る。封印術には万年筆が突き刺さっていた。ルークがダーツの要領で投げて当てたのだ。
「貴様ぁっ!」
「よっ、と」
ラルゴがルークに振りかぶる。ルークは軽々とそれを避けると、ラルゴの腹に飛び蹴りを喰らわせた。そしてよろけたラルゴの頭にネリチャギ。そして小声で、ラルゴだけに聞こえるように呟く。
「ナタリア泣かすような事すんな」
「!」
ラルゴは薄れゆく意識の中ルークの言葉を聞いていた。
「ルーク、怪我はない!?」
「大丈夫だっつーの」
床に転がった封印術をとどめとといわんばかりに万年筆を抜いてから踏み付けた。どうやらペン先は無事のようである。
「ジェイド、この様子じゃどうせブリッジ乗っとられてるだろうし、緊急停止でもすれば?」
「やれやれ、なんでもお見通しですか」
「死霊使いジェイドが何にもしてないなんて思わねぇよ、フツー」
ジェイドは溜息をつきながら近くの無線を取る。こう先に先に読まれると、こうも疲れるのかと思いながら緊急停止の指示を出した。
タルタロスの全動力が停止し、とまる。ルークは少しおろおろしているティアの手を引きながらタルタロスの外へと出るのであった。
Next→ブーブラス川~カイツール
〈ガイ様華麗に参上?編〉
ルーク達が外に出るとリグレットがイオンを連れて戻ってきた所だった。ジェイドがリグレットの首筋に槍を向け、リグレットの武器を蹴り飛ばす。
「やっと出られた…」
アリエッタのライガがルークに襲い掛かろうとしたが止まった。ルークから一歩一歩後ずさりしていく。
「?」
その様子にアリエッタは首を傾げる。ライガはルークに対して怯えと、疑惑を抱いているらしい。取り押さえられたままのティアとジェイドはリグレットの真上に人が落ちてくるのをそのまま見ることになってしまった。
「ガイ様華麗に参上」
「ガイ、遅い」
「ルーク…第一声がそれか…」
イオンを奪還してルークの後ろに隠そうとしたガイはルークの姿が既にそこにないことに気付く。
「民間人に助けられるなんて、軍人の名折れじゃねぇの?」
「あはははは、その軍人以上に戦い慣れてる民間人に言われたくないですねぇ」
「…ジェイド、それでは負け惜しみのようですよ」
イオンが思わず突っ込んだ頃にはリグレットもアリエッタもその他の信託の盾兵もルークによって昏倒させられ、怯えたライガの背に乗せられ、タルタロスの中に戻されていた。
「ガイの登場、霞んだな…」
たまたま上から覗いていたアッシュは溜息と共に一カ所に纏めたマルクト兵士達をセントビナーで降ろす準備を始めたのだった。
・ルークにダメだしされるガイ様でした。
タルタロスの一室で、ルークはどっかり椅子に座って話し出した。ルーク護送中、近くにいなかったアニスはルークが公爵子息だと知り、はしゃいでいるが、一方ジェイドは精神的に疲れているのかぐったりしている。
「俺の地位がいるんだろ?協力してやるよ」
ルークは不敵に笑い、ジェイドは苦笑いを浮かべる。その前になんで説明もしていないのにこんな事を言うのかジェイドにはさっぱり解らない。
「ピオニー陛下の懐刀が戦争でも無いのにこんなとこにいるなんておかしいだろ」
「それもそうね」
「ルーク様ってば、あったまいぃ!」
ティアはルークに同意する。アニスはきゃいきゃいはしゃぎ過ぎだ。
「キムラスカに和平の親書を届けに来たんですよ」
「伯父上に取り次げばいいんだな」
「お願いします」
「へいへい」
ルークはやる気なさ気にジェイドに返事する。その時キーンと耳鳴りがした。回線が繋がる時の頭痛は無くなったが、繋がる瞬間の耳鳴りだけは消えなかった。まぁこれはこれで使えるが。
『もうすぐタルタロスを強襲する、どじるなよ?』
『わかってるよ』
ルークはアッシュに返事をすると風に当たると言って外に出たイオンを追った。
「うわー…すげぇ数」
外に既にイオンの姿はなく、連れ去られた後のようだった。タルタロスの上空には無数のグリフィンが飛んでおりライガがその背に乗っている。
「さて、と中戻るか」
まずはラルゴを探して封印術を壊さなければならない。封印術にかかったジェイドなんて唯の陰険なおっさんである。恐らくラルゴはまだだろう。中に戻るとタルタロスが大きく揺れた。ジェイドがブリッジと連絡をとると巨大な鎌が襲ってきた。
「大人しくしていて貰おうか」
ジェイドの槍が信託の盾兵をなぐ。出口を塞いで笑っていたのはラルゴだった。ラルゴはルークを一瞥するとジェイドに視線を戻し、封印術を取り出した。ルークがポケットを漁っているのに気付かず。ラルゴが軽く封印術を投げる。ジェイドに当たるかと思われたそれは思わぬ物で軌道を反らされ床に転がった。
「大当りぃ~♪」
ラルゴが驚いてルークと床に転がる封印術を交互に見る。封印術には万年筆が突き刺さっていた。ルークがダーツの要領で投げて当てたのだ。
「貴様ぁっ!」
「よっ、と」
ラルゴがルークに振りかぶる。ルークは軽々とそれを避けると、ラルゴの腹に飛び蹴りを喰らわせた。そしてよろけたラルゴの頭にネリチャギ。そして小声で、ラルゴだけに聞こえるように呟く。
「ナタリア泣かすような事すんな」
「!」
ラルゴは薄れゆく意識の中ルークの言葉を聞いていた。
「ルーク、怪我はない!?」
「大丈夫だっつーの」
床に転がった封印術をとどめとといわんばかりに万年筆を抜いてから踏み付けた。どうやらペン先は無事のようである。
「ジェイド、この様子じゃどうせブリッジ乗っとられてるだろうし、緊急停止でもすれば?」
「やれやれ、なんでもお見通しですか」
「死霊使いジェイドが何にもしてないなんて思わねぇよ、フツー」
ジェイドは溜息をつきながら近くの無線を取る。こう先に先に読まれると、こうも疲れるのかと思いながら緊急停止の指示を出した。
タルタロスの全動力が停止し、とまる。ルークは少しおろおろしているティアの手を引きながらタルタロスの外へと出るのであった。
Next→ブーブラス川~カイツール
〈ガイ様華麗に参上?編〉
ルーク達が外に出るとリグレットがイオンを連れて戻ってきた所だった。ジェイドがリグレットの首筋に槍を向け、リグレットの武器を蹴り飛ばす。
「やっと出られた…」
アリエッタのライガがルークに襲い掛かろうとしたが止まった。ルークから一歩一歩後ずさりしていく。
「?」
その様子にアリエッタは首を傾げる。ライガはルークに対して怯えと、疑惑を抱いているらしい。取り押さえられたままのティアとジェイドはリグレットの真上に人が落ちてくるのをそのまま見ることになってしまった。
「ガイ様華麗に参上」
「ガイ、遅い」
「ルーク…第一声がそれか…」
イオンを奪還してルークの後ろに隠そうとしたガイはルークの姿が既にそこにないことに気付く。
「民間人に助けられるなんて、軍人の名折れじゃねぇの?」
「あはははは、その軍人以上に戦い慣れてる民間人に言われたくないですねぇ」
「…ジェイド、それでは負け惜しみのようですよ」
イオンが思わず突っ込んだ頃にはリグレットもアリエッタもその他の信託の盾兵もルークによって昏倒させられ、怯えたライガの背に乗せられ、タルタロスの中に戻されていた。
「ガイの登場、霞んだな…」
たまたま上から覗いていたアッシュは溜息と共に一カ所に纏めたマルクト兵士達をセントビナーで降ろす準備を始めたのだった。
・ルークにダメだしされるガイ様でした。
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イオンは歩いていた。信託の盾の軍服をきて長閑な田園地帯を。
「カンタビレはいつもこんなところに来ているんですか?」
「うん。あとは大発生したイナゴの退治とかね」
「結構どうでもいいことばっかりですね」
前を歩くのはカンタビレだ。人通りの全くない道を二人は歩いていく。
「イオン様は演技派だよねぇ」
「そうですか?」
「うん。現にモース簡単に騙されてたし」
レプリカイオンとすりかわる為にイオンは死んだふりの演技をしたのだ。葬儀はひっそりと行われたため知る人の方が少ない。
「貴方の人の掠いかたも見事でしたよ」
「まぁ、擬似超振動利用しただけだけどね」
カンタビレが笑うとイオンも笑う。
「外はこんなに広いんですね」
「そうだよ。広すぎて迷子になるくらいにねー」
「あははは、そうですね」
二人は笑っていた。笑って延々と続く畦道を歩いていくのだった。暫く二人旅は続きそうである。
・一挙に二話…それにしてもイナゴって…
「カンタビレはいつもこんなところに来ているんですか?」
「うん。あとは大発生したイナゴの退治とかね」
「結構どうでもいいことばっかりですね」
前を歩くのはカンタビレだ。人通りの全くない道を二人は歩いていく。
「イオン様は演技派だよねぇ」
「そうですか?」
「うん。現にモース簡単に騙されてたし」
レプリカイオンとすりかわる為にイオンは死んだふりの演技をしたのだ。葬儀はひっそりと行われたため知る人の方が少ない。
「貴方の人の掠いかたも見事でしたよ」
「まぁ、擬似超振動利用しただけだけどね」
カンタビレが笑うとイオンも笑う。
「外はこんなに広いんですね」
「そうだよ。広すぎて迷子になるくらいにねー」
「あははは、そうですね」
二人は笑っていた。笑って延々と続く畦道を歩いていくのだった。暫く二人旅は続きそうである。
・一挙に二話…それにしてもイナゴって…
「ですのー」
「…うぜぇ…」
ルークは思わず呟いた。ミュウが火を吹くお陰で難無く川は渡れるが、やっぱりなんか欝陶しい気がする。
「ですのー」
「お前、少し黙れ」
「みゅうぅ~」
ルークは溜息を吐いてミュウをティアに持たせる。
「えっ?」
「実はこういうの好きだろ?」
「う……ぅん//////」
「俺的にはイオンの方が癒される」
「僕がですか?」
イオンはきょとんとしながら聞く。勿論ルークが比べているのは、イオンとミュウではなくイオンとオリジナルイオンだが二人は気付かない。
「ここか?」
「そのようですね」
えぐれたような木の根の穴をルークが先頭で歩いていく。ライガクィーンの気遣いだろうか?魔物はいなかった。
「あ、記憶陣」
「あれには回復効果があるわ」
ティアが説明すると、ルークはほぇーと関心するそぶりを見せる。そんなルークを見ながらティアは可愛いと一人心の中で悶えていた。更に奥に進むと、ライガクィーンが待ち構えていた。
「…話し合う余地なしってか?」
ルークが呟くとライガクィーンが吠え、岩が落下してくる。ルークはそれを剣で弾くと、イオンを庇う。
「戦いましょう」
「それしかねぇな、ミュウ、お前はさがってろ」
ルークにしたがい、ミュウはイオンと共に下がる。ルークはライガクィーンに向かって駆け出した。ティアやイオンにばれないように詠唱する。いくらライガクィーンでもルークにはあっさり負けてしまうから解らないように回復をかけているのだ。ジェイドが来たら倒れたふりをしてもらう為に攻撃の際、ライガクィーンに囁きながら。
「くっ、強い」
「苦戦してるみたいですね」
「誰!?」
「詮索は後にしてください、貴方がたは援護をお願いします」
「わかった」
ジェイドがライガクィーンに攻撃を仕掛ける。どさりとライガクィーンの体が横たわった。
「やった…」
「イオン様、勝手に行かれては困ります」
「すみません、ジェイド」
イオンがジェイドに謝るとジェイドはへらりと笑っていた。正直不気味である。
「では、戻りますか」
「チーグルの長老に報告行ってからだ」
「そうね、ミュウ」
「はいですの」
ミュウが喋ったことに驚いたのか、ジェイドは少し眼鏡が擦れていた。ルークはそれを見て笑いそうになるが堪えた。
……………………………………………………
チーグルの長老への報告もすみ、ミュウを連れていくことになったが、ルークはイオンに先に行っててくれと言い残し、ジェイドやティアにばれないように離脱した。
「ライガクィーン」
巣に戻って見ると、やはりジェイドの攻撃は痛手だったのか傷付いて動けないでいるライガクィーンがいた。卵は孵化したようで、仔ライガがライガクィーンの廻りで心配そうに寄り添っていた。
「今治しますね?」
ルークはもしジェイド達が追って来てもルークが譜術を使えるとばれないようにグレースの姿でライガクィーンの元を訪れていた。
「口が悪くてびっくりしたでしょう?実はあれが素なんですよ」
ライガクィーンは気にしてないとでも言うようにルークに頬を擦り付ける。仔ライガもルークにライガクィーンが懐いている様子を見て足元でじゃれていた。
「行ってください、あの軍人が戻ってきたら今度こそ殺されかねない」
ライガクィーンは仔ライガを引き連れてキノコロードの方へと駆けて行った。
「さて、これをこうして…」
拾って来た太めの枝で十字架を作り立てた。仮面を外し、ルークの姿に戻る。髪を上げてかつらをかぶって固定し、ルークはそこを後にした。
「ルーク、勝手にいなくならないで」
「ティア」
ライガの巣の入り口から出てくると息を切らしたティアが立っていた。どうやら探し回ったらしい。イオンは言わなかったようだ。
「ごめん」
「何してたの?」
「墓立ててた。簡単なやつだけど」
そこにマルクト兵士を数人引き連れたジェイドがやってくる。
「貴方たちの身柄を拘束させていただきます」
「へいへい。行こうぜ、ティア」
まるでこうなることを知っていたかのようなルークはジェイドの後を素直について行った。因みにタルタロスまでの道程の間でジェイドはルークの腹黒さを痛いほど痛感させられ、マルクト兵士は気まずさでカチコチになりながら護送をしていたのだった。
Next→タルタロス
・更新かなり久々だなぁ…
「…うぜぇ…」
ルークは思わず呟いた。ミュウが火を吹くお陰で難無く川は渡れるが、やっぱりなんか欝陶しい気がする。
「ですのー」
「お前、少し黙れ」
「みゅうぅ~」
ルークは溜息を吐いてミュウをティアに持たせる。
「えっ?」
「実はこういうの好きだろ?」
「う……ぅん//////」
「俺的にはイオンの方が癒される」
「僕がですか?」
イオンはきょとんとしながら聞く。勿論ルークが比べているのは、イオンとミュウではなくイオンとオリジナルイオンだが二人は気付かない。
「ここか?」
「そのようですね」
えぐれたような木の根の穴をルークが先頭で歩いていく。ライガクィーンの気遣いだろうか?魔物はいなかった。
「あ、記憶陣」
「あれには回復効果があるわ」
ティアが説明すると、ルークはほぇーと関心するそぶりを見せる。そんなルークを見ながらティアは可愛いと一人心の中で悶えていた。更に奥に進むと、ライガクィーンが待ち構えていた。
「…話し合う余地なしってか?」
ルークが呟くとライガクィーンが吠え、岩が落下してくる。ルークはそれを剣で弾くと、イオンを庇う。
「戦いましょう」
「それしかねぇな、ミュウ、お前はさがってろ」
ルークにしたがい、ミュウはイオンと共に下がる。ルークはライガクィーンに向かって駆け出した。ティアやイオンにばれないように詠唱する。いくらライガクィーンでもルークにはあっさり負けてしまうから解らないように回復をかけているのだ。ジェイドが来たら倒れたふりをしてもらう為に攻撃の際、ライガクィーンに囁きながら。
「くっ、強い」
「苦戦してるみたいですね」
「誰!?」
「詮索は後にしてください、貴方がたは援護をお願いします」
「わかった」
ジェイドがライガクィーンに攻撃を仕掛ける。どさりとライガクィーンの体が横たわった。
「やった…」
「イオン様、勝手に行かれては困ります」
「すみません、ジェイド」
イオンがジェイドに謝るとジェイドはへらりと笑っていた。正直不気味である。
「では、戻りますか」
「チーグルの長老に報告行ってからだ」
「そうね、ミュウ」
「はいですの」
ミュウが喋ったことに驚いたのか、ジェイドは少し眼鏡が擦れていた。ルークはそれを見て笑いそうになるが堪えた。
……………………………………………………
チーグルの長老への報告もすみ、ミュウを連れていくことになったが、ルークはイオンに先に行っててくれと言い残し、ジェイドやティアにばれないように離脱した。
「ライガクィーン」
巣に戻って見ると、やはりジェイドの攻撃は痛手だったのか傷付いて動けないでいるライガクィーンがいた。卵は孵化したようで、仔ライガがライガクィーンの廻りで心配そうに寄り添っていた。
「今治しますね?」
ルークはもしジェイド達が追って来てもルークが譜術を使えるとばれないようにグレースの姿でライガクィーンの元を訪れていた。
「口が悪くてびっくりしたでしょう?実はあれが素なんですよ」
ライガクィーンは気にしてないとでも言うようにルークに頬を擦り付ける。仔ライガもルークにライガクィーンが懐いている様子を見て足元でじゃれていた。
「行ってください、あの軍人が戻ってきたら今度こそ殺されかねない」
ライガクィーンは仔ライガを引き連れてキノコロードの方へと駆けて行った。
「さて、これをこうして…」
拾って来た太めの枝で十字架を作り立てた。仮面を外し、ルークの姿に戻る。髪を上げてかつらをかぶって固定し、ルークはそこを後にした。
「ルーク、勝手にいなくならないで」
「ティア」
ライガの巣の入り口から出てくると息を切らしたティアが立っていた。どうやら探し回ったらしい。イオンは言わなかったようだ。
「ごめん」
「何してたの?」
「墓立ててた。簡単なやつだけど」
そこにマルクト兵士を数人引き連れたジェイドがやってくる。
「貴方たちの身柄を拘束させていただきます」
「へいへい。行こうぜ、ティア」
まるでこうなることを知っていたかのようなルークはジェイドの後を素直について行った。因みにタルタロスまでの道程の間でジェイドはルークの腹黒さを痛いほど痛感させられ、マルクト兵士は気まずさでカチコチになりながら護送をしていたのだった。
Next→タルタロス
・更新かなり久々だなぁ…
※一部濡れ場があるのでご注意
夜のタタル渓谷は静かだ。魔物の大半は眠ってしまっているし、チーグルも眠っているようだ。ルークはその薄暗い夜道を歩いていく。タンタンとリズミカルな足音は水の音に掻き消されるくらい小さな物だ。
「ライガクィーン」
巣穴のような木の根の下で眠っているライガクィーンにルークは呼び掛けた。ぴくりとライガクィーンの耳が動く。
「こんな遅くにすみません、グレースです」
ライガクィーンは目を覚ましたのか、向くりと起き上がってルークを見た。
「少しお願いがありまして、私が明日の昼また来たら倒されたふりしてキノコロードの奥に隠れて下さいませんか?」
ライガクィーンはきょとんと首を傾げる。
「このままではいずれ討伐隊が来るでしょう。私は貴女に死んで欲しく無いんです。それにキノコロードの奥でしたら食事には困りませんし」
ルークはそこまで言って、ライガクィーンに近寄る。
「アリエッタの妹や弟、早くかえるといいですね」
ライガクィーンはルークにほお擦りをした。どうやら了承してくれたらしい。
「明日、私違う姿で来ますけど大丈夫ですか?」
するとライガクィーンはぴすぴすと鼻を鳴らした。臭いでわかると言っているらしい。
「では、おやすみなさい」
ルークは最後にぎゅっと抱きしめてライガクィーンの元を去った。
……………………………………………………
「っあ…は…アッシュぅ…俺もぉ宿戻んなきゃ…ティアに抜け出したのばれちゃうっ」
「そう言いながらこんなに締め付けて離さねぇのはお前だろうが」
「ひぅ…もぉおっきくしちゃ、やぁ…あぁ---っ」
びくんと身体を痙攣させてルークは達した。追うようにアッシュも達する。ここはチーグルの森の入って直ぐの場所で、いつ人が来るか解らないような所だ。
「ルーク…」
「ん…アッシュ、抜ぃて」
「無理させたな…」
「いぃよ…アッシュだもん」
ルークは苦笑しながらアッシュをズルリと引き抜く。ぼたぼたと秘部からアッシュの放った白濁が零れる。卑猥な光景にアッシュは眩暈がした。
「ルー…「グレース」」
言い直させるルークにアッシュは苦笑して回線でルークの名を呼んだ。直ぐに回線で「なぁに?」と返ってくる。
『愛してる、ルーク』
「っ//////」
「お前は?」
「あ…あぃして…ます…アッシュ//////」
真っ赤になりながらルークはアッシュに告げると、アッシュは満足したようでルークに口付けた。
『もう行くね?またねアッシュ』
『あぁ』
ルークは顔を真っ赤にしながらパタパタとエンゲーブの方へ走って行った。ルークが宿に戻るとティアは眠っていた。音も気配も消して浴場へと向かう。宿屋の主人は家に帰っているようでフロントには誰もいなかった。湯で情交の跡を流してしまってルークは布団に潜り込む。目をつぶれば夢が見れた。愛しい恋人の夢。
……………………………………………………
翌朝ルークは謎の重みで目が覚めた。横を見るとミルクティー色の髪が広がっている。
「!?」
「…おはよう」
「ティアなんで同じ布団で!?」
「?貴方が寝ぼけて引きずり込んだんじゃない」
「そっか、悪かったな」
ルークはするりとベットから抜けだすと数回伸びをした。パキリと骨のなる音がする。
「よっし、チーグルの森行くか!」
「えっ?」
「犯人突き出してやろうぜ」
ルークはティアの手を引いてチーグルの森へと向かう。ティアは真っ赤だった。
「あれ、イオンじゃないか!?」
チーグルの森の入口で、魔物に囲まれているイオンを見つけ二人は焦る。
「まずい、イオン!ダアト式譜術使うなっ!!」
「えっ」
「ルーク!?」
叫んだルークは既に駆け出していた。地を蹴って跳躍、そのまま凪ぐように一閃。イオンを抱えてバックステップ。まるで踊るかのような一連の動作。それはヴァンの使う剣術とは似ても似つかない。
「ティア、イオン頼むな」
「ルーク!」
「凍っちまえ!守護氷槍陣っ」
パキンと氷の砕ける音と共に、魔物は消え去っていた。ルークの横顔に表情は全く見受けられない。ティアはぞっとした。ルークの目は軍人のそれだった。
「大丈夫か!?イオン」
「えぇ、僕は。ありがとうございます、ルーク」
「チーグル探しに来たんだろ?一緒に行こうぜ」
ルークはひょいとイオンを横抱きにして、すたすたと進む。ティアは溜息を吐いて、ルークの後を追う。
「何故、僕がチーグルを探しに来たと解ったんですか?」
「昨日の今日だしな」
「そうですか…」
ルークはイオンを下ろして笑う。昨日の事はもう怒っていないらしく、イオンはほっとした。
「きちんと挨拶してなかったな。俺はルークでこっちが〈モース大詠士指揮下情報部第一小隊所属のティア・グランツ響長〉ヴァン師匠の妹だ」
「私、ルークに話したかしら?」
「カンタビレに聞いたんだよ。ヴァン師匠には妹がいるんだーって」
思わぬ名前が出てきてティアとイオンは驚いた。
「カンタビレと知り合いなんですか?」
「俺が掠われた時、見つけて貰ってからずっと友達だ」
ルークはにっこり笑う。そこにひょこひょことチーグルの仔供が歩いて来た。
「いた!イオン追っ掛けるぞ」
「あ、はい!」
逃げるチーグルの仔供をルークは音を立てて追う。理由は明確。逃げていく場所を知っているから。暫く追っているとチーグルを見失ってしまった。
「逃げられちまった…」
「そうですね」
イオンとティアは小走りに戻ってきたルークを見て不思議に思う。あれだけ動いているのに汗一つかいていない。息を切らしている様子もなかった。
「あ、そうだイオン。これやるよ」
「この譜石、どうしたんです?」
ルークがイオンに手渡したのは透き通ったように見える譜石。
「イオンにあげたかったから」
ルークは笑ってイオンに言う。イオンはそっと口にせず譜石を詠んで目を見開いた。
「ルーク、これを何処で?」
「 」
「ティア!?」
ルークが何か呟くと、ティアがふらりとよろけてしまった。
「大丈夫です、導師。少し眩暈がしただけですから」
「少し休むか?別にそんなに急いで帰る気はねぇし」
「いいの?」
「せっかく外に出れたんだ。暫く旅すんのも悪くねぇし、ヴァン師匠にスカートはかされそうになる心配もねぇ」
その場の空気が固まった。ティアは涙を流して兄さんと呟くし、イオンはイオンで微妙な表情だ。グレースの軍服がスカートなのを思い出したのだろう。
「泣くなよ…ヴァン師匠がスカート履いてるよりましだろー?」
それはそれで嫌だ。というか、かなり嫌だ。確実にキモい。
「あ、チーグル」
ティアが微妙に泣き崩れるなかルークの視線の先はさっきとは違うチーグルの仔供だった。こちらに気付くと一目散に逃げていく。三人はそれを追った。暫く行くと林檎が転がっていた。エンゲーブの焼き印が押されたそれをルークは拾い上げる。
「獣の気配がするわ」
「行きましょう、何故彼等がこんな事をするのか知りたい」
イオンが木の中に入っていってしまったのでルークとティアもそれに続く事にした。
Next→ライガクィーン戦
夜のタタル渓谷は静かだ。魔物の大半は眠ってしまっているし、チーグルも眠っているようだ。ルークはその薄暗い夜道を歩いていく。タンタンとリズミカルな足音は水の音に掻き消されるくらい小さな物だ。
「ライガクィーン」
巣穴のような木の根の下で眠っているライガクィーンにルークは呼び掛けた。ぴくりとライガクィーンの耳が動く。
「こんな遅くにすみません、グレースです」
ライガクィーンは目を覚ましたのか、向くりと起き上がってルークを見た。
「少しお願いがありまして、私が明日の昼また来たら倒されたふりしてキノコロードの奥に隠れて下さいませんか?」
ライガクィーンはきょとんと首を傾げる。
「このままではいずれ討伐隊が来るでしょう。私は貴女に死んで欲しく無いんです。それにキノコロードの奥でしたら食事には困りませんし」
ルークはそこまで言って、ライガクィーンに近寄る。
「アリエッタの妹や弟、早くかえるといいですね」
ライガクィーンはルークにほお擦りをした。どうやら了承してくれたらしい。
「明日、私違う姿で来ますけど大丈夫ですか?」
するとライガクィーンはぴすぴすと鼻を鳴らした。臭いでわかると言っているらしい。
「では、おやすみなさい」
ルークは最後にぎゅっと抱きしめてライガクィーンの元を去った。
……………………………………………………
「っあ…は…アッシュぅ…俺もぉ宿戻んなきゃ…ティアに抜け出したのばれちゃうっ」
「そう言いながらこんなに締め付けて離さねぇのはお前だろうが」
「ひぅ…もぉおっきくしちゃ、やぁ…あぁ---っ」
びくんと身体を痙攣させてルークは達した。追うようにアッシュも達する。ここはチーグルの森の入って直ぐの場所で、いつ人が来るか解らないような所だ。
「ルーク…」
「ん…アッシュ、抜ぃて」
「無理させたな…」
「いぃよ…アッシュだもん」
ルークは苦笑しながらアッシュをズルリと引き抜く。ぼたぼたと秘部からアッシュの放った白濁が零れる。卑猥な光景にアッシュは眩暈がした。
「ルー…「グレース」」
言い直させるルークにアッシュは苦笑して回線でルークの名を呼んだ。直ぐに回線で「なぁに?」と返ってくる。
『愛してる、ルーク』
「っ//////」
「お前は?」
「あ…あぃして…ます…アッシュ//////」
真っ赤になりながらルークはアッシュに告げると、アッシュは満足したようでルークに口付けた。
『もう行くね?またねアッシュ』
『あぁ』
ルークは顔を真っ赤にしながらパタパタとエンゲーブの方へ走って行った。ルークが宿に戻るとティアは眠っていた。音も気配も消して浴場へと向かう。宿屋の主人は家に帰っているようでフロントには誰もいなかった。湯で情交の跡を流してしまってルークは布団に潜り込む。目をつぶれば夢が見れた。愛しい恋人の夢。
……………………………………………………
翌朝ルークは謎の重みで目が覚めた。横を見るとミルクティー色の髪が広がっている。
「!?」
「…おはよう」
「ティアなんで同じ布団で!?」
「?貴方が寝ぼけて引きずり込んだんじゃない」
「そっか、悪かったな」
ルークはするりとベットから抜けだすと数回伸びをした。パキリと骨のなる音がする。
「よっし、チーグルの森行くか!」
「えっ?」
「犯人突き出してやろうぜ」
ルークはティアの手を引いてチーグルの森へと向かう。ティアは真っ赤だった。
「あれ、イオンじゃないか!?」
チーグルの森の入口で、魔物に囲まれているイオンを見つけ二人は焦る。
「まずい、イオン!ダアト式譜術使うなっ!!」
「えっ」
「ルーク!?」
叫んだルークは既に駆け出していた。地を蹴って跳躍、そのまま凪ぐように一閃。イオンを抱えてバックステップ。まるで踊るかのような一連の動作。それはヴァンの使う剣術とは似ても似つかない。
「ティア、イオン頼むな」
「ルーク!」
「凍っちまえ!守護氷槍陣っ」
パキンと氷の砕ける音と共に、魔物は消え去っていた。ルークの横顔に表情は全く見受けられない。ティアはぞっとした。ルークの目は軍人のそれだった。
「大丈夫か!?イオン」
「えぇ、僕は。ありがとうございます、ルーク」
「チーグル探しに来たんだろ?一緒に行こうぜ」
ルークはひょいとイオンを横抱きにして、すたすたと進む。ティアは溜息を吐いて、ルークの後を追う。
「何故、僕がチーグルを探しに来たと解ったんですか?」
「昨日の今日だしな」
「そうですか…」
ルークはイオンを下ろして笑う。昨日の事はもう怒っていないらしく、イオンはほっとした。
「きちんと挨拶してなかったな。俺はルークでこっちが〈モース大詠士指揮下情報部第一小隊所属のティア・グランツ響長〉ヴァン師匠の妹だ」
「私、ルークに話したかしら?」
「カンタビレに聞いたんだよ。ヴァン師匠には妹がいるんだーって」
思わぬ名前が出てきてティアとイオンは驚いた。
「カンタビレと知り合いなんですか?」
「俺が掠われた時、見つけて貰ってからずっと友達だ」
ルークはにっこり笑う。そこにひょこひょことチーグルの仔供が歩いて来た。
「いた!イオン追っ掛けるぞ」
「あ、はい!」
逃げるチーグルの仔供をルークは音を立てて追う。理由は明確。逃げていく場所を知っているから。暫く追っているとチーグルを見失ってしまった。
「逃げられちまった…」
「そうですね」
イオンとティアは小走りに戻ってきたルークを見て不思議に思う。あれだけ動いているのに汗一つかいていない。息を切らしている様子もなかった。
「あ、そうだイオン。これやるよ」
「この譜石、どうしたんです?」
ルークがイオンに手渡したのは透き通ったように見える譜石。
「イオンにあげたかったから」
ルークは笑ってイオンに言う。イオンはそっと口にせず譜石を詠んで目を見開いた。
「ルーク、これを何処で?」
「 」
「ティア!?」
ルークが何か呟くと、ティアがふらりとよろけてしまった。
「大丈夫です、導師。少し眩暈がしただけですから」
「少し休むか?別にそんなに急いで帰る気はねぇし」
「いいの?」
「せっかく外に出れたんだ。暫く旅すんのも悪くねぇし、ヴァン師匠にスカートはかされそうになる心配もねぇ」
その場の空気が固まった。ティアは涙を流して兄さんと呟くし、イオンはイオンで微妙な表情だ。グレースの軍服がスカートなのを思い出したのだろう。
「泣くなよ…ヴァン師匠がスカート履いてるよりましだろー?」
それはそれで嫌だ。というか、かなり嫌だ。確実にキモい。
「あ、チーグル」
ティアが微妙に泣き崩れるなかルークの視線の先はさっきとは違うチーグルの仔供だった。こちらに気付くと一目散に逃げていく。三人はそれを追った。暫く行くと林檎が転がっていた。エンゲーブの焼き印が押されたそれをルークは拾い上げる。
「獣の気配がするわ」
「行きましょう、何故彼等がこんな事をするのか知りたい」
イオンが木の中に入っていってしまったのでルークとティアもそれに続く事にした。
Next→ライガクィーン戦
トゥエ レイ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ
「ようやく見つけた、裏切り者ヴァンデスデルカ」
柔らかな歌声と共に現れた少女にルークは心を踊らせた。
「やはりお前か!ティア!」
ヴァンの叫ぶ声がする。ヴァンにとって彼女の登場は本当に予想外だったのだろう。ルークは心の中で少し笑って謝った。巻き込んでごめんねと。
「なんなんだよ、お前はぁーっ!」
「いかん、ティア、ルーク!」
「これは第七音素!?」
キーンという耳鳴り。ルークはローレライの力を感じた。意識が消える。次に目覚めるのはきっとタタル渓谷だ。
……………………………………………………
「ルーク、ルーク起きて」
ルークはティアに呼ばれ目を覚ました。夜の渓谷はセレニアの花が咲き誇っていて綺麗だ。
「大丈夫?怪我はない?」
「大丈夫だ、ここは?」
「ごめんなさい、わからないの」
「ティアのせいじゃないよ」
ルークは微笑んで言うが、ティアはびっくりしたようだ。
「なんで私の名前…」
「師匠が叫んでたし…」
「あぁ…それで」
ティアは納得したようで、ルークに手を貸して立ち上がらせる。
「っと、ありがとうティア」
「どう…いたしまして」
笑うルークにティアの顔は真っ赤だ。可愛いなぁ、初々しくてとルークはますます笑う。
「海沿いに行ったらバチカル帰れるかな?」
「そうね…でも方角も解らないし」
「大丈夫、なんとかなるよ」
ルークはティアにそう声をかけて水の音のする方へ歩く。
「!ティア、魔物がくる」
「えぇ」
ルークはさっとティアを庇って、猪のような魔物を凪ぐように切る。それはとても鮮やかだった。
「強いのね…」
「違ぇよ、俺は強くなんかない。ティアの方がよっぽど強いよ」
ルークは苦笑しながらいう。
「でも、強いわ」
「ありがとう、さーさくさく行くぞ!」
「えぇ」
川を下ると馬を休めている男にあった。
「首都まで乗せていってくれませんか?」
ティアが申し出ると男は料金は前払いだと言う。
「じゃあこ…」
「これじゃだめか?」
ひゅんと男にペーパーナイフが投げられる。きちんと鞘におさまったそれは見るだけで上物だと知れた。
「これなら」
男はペーパーナイフを懐にしまうと二人を馬車に案内した。
「ルーク、なんでペーパーナイフなんて持っていたの?」
「さぁ?着替えた時に紛れたんじゃねぇの?夜も遅ぇし寝ようぜ」
「そうね…おやすみなさい」
寝息をたてはじめたティアを見ながらルークは笑みを浮かべた。
「ティアのお母さんの形見だもんな、売る訳にはいかねぇよ」
ルークは自分も眠ろうと大きく一つ息を吐くと、目をつぶった。
……………………………………………………
「んー…よく寝た」
馬車の中でルークは大きく伸びをした。ティアはとっくに目を覚ましていたらしく窓の外を見ている。
《そこの辻馬車、道を開けなさい。巻き込まれますよ》
聞き覚えある声にルークは窓の外を見る。真っ白なタルタロスが馬車を追っているところだった。
「あれ、マルクト軍だよな」
「え?ここはキムラスカじゃないの!?」
ルークはのほほんとタルタロスを見ている。あまり必死性は感じられない。
「あ、橋落とされた。キムラスカ行けねぇな…おじさんここで下ろして、エンゲーブまで歩くから」
ルークは辻馬車の男にそう告げ、さっさとおりてしまう。
「ルーク、貴方あそこが何処か知っていたのね?」
「キムラスカにああいう渓谷ないしな。多分タタル渓谷だろうなとは思ってた。それに俺、屋敷に軟禁されてたから外の事あまり知らねぇし」
ルークはやる気なさそうに答える。しかし出てくる魔物は一発で仕留めたりして微妙にガルドは貯まりつつあったりする。
「ルーク、なんでそんなに戦い慣れているの?」
「んー?なんでだろ?体が勝手に動くんだよなー、よっと」
うねうねした魔物の攻撃を避けてルークはそれに剣を突き立てた。
「師匠との修業の成果かな?」
「…………」
ティアはじとりとルークを見たがエンゲーブが見えてきたので、口論を止めた。
……………………………………………………
「……………」
「…あぁ、さっき、陸艦で辻馬車追い掛けてたのにも関わらず間抜けにも逃げられた、ジェイド・カーティス大佐ね」
盗っ人とわざと間違えられたルークはローズ邸にいるジェイドと出会うができた。しばらく、ジェイドは押し黙った。
「貴方は?」
「ルークだ、こっちはティア。言っとくが漆黒の翼じゃねぇからな?漆黒の翼はあんたが取り逃がしてたろ?」
「先程の辻馬車に乗っていたんですか」
ジェイドは苦笑した。まるで、信託の盾の口の悪いあの少年のようだ。紅い髪の導師守護役。
「あぁ」
「その方は犯人ではありませんよ」
「イオ…」
「イオン!すっげー久しぶり覚えてるか?」
入ってきたイオンにルークは抱き着いた。ティアは思わず可愛いと口にしかけて、手で押さえた。男に可愛いは駄目だと以前ヴァンに言われたからだ。
「貴方は…」
「まぁ覚えて無いかもな、お前がうち来たの6年も前だし」
ルークは腕の中のイオンを放してイオンの手の中のものをみる。白い綿毛のようなそれは、獣の毛だ。
「あれ?チーグルの毛じゃん、イオン何処で拾って来たんだ?」
「あぁ、倉庫に落ちていました。結構な量が有りましたからチーグルが犯人でしょうね」
「ほらー、俺達無実じゃねーかよ!」
「すまなかったな」
「別に」
ルークは興味を無くしたのか、てくてくとローズ邸を出ていく。
「あの、貴方は…」
「聖なる焔の光、じゃあなイオン」
そう言い残してルークは扉を締めた。どうやら少し怒っているようだ。無理もない。知り合いに忘れられていたのなら。
「ルーク…ですか…」
「ジェイド」
「なんですか?イオン様」
「…いえなんでもありません」
イオンは安心させるように笑うと、ローズに倉庫の件について話し出した。
……………………………………………………
「パスタのレシピ」を手に入れました。とどっからともなく声が聞こえた気がしてルークは溜息を吐いた。
「どうしたの?ルーク」
「なんでもねぇよ、それよりもう宿戻んねぇ?疲れたし」
「そうね、食材も手に入ったし、今日は休みましょう」
ティアがルークの言葉に賛成して宿に戻るとツインテールの少女が宿屋の主人に話しを聞いているところだった。
「はぅー…イオン様どこいっちゃったんだろ」
「イオンならローズって人ん家だぜ、ジェイドも一緒に居るから」
「あ、本当ですか?ありがとうございます」
「アニス、トクナガ落としましたよ」
「へ…ありがとうございます。グレースさ…ってあれ?いない空耳かなぁ」
首を傾げてトクナガを拾い宿を出ていくアニスをルークはくすくす笑いながら見ている。ティアは呆れたように溜息をついた。
「ルーク…貴方最低ね」
「褒め言葉として受け取っとく」
「………」
そんなルークに絶句したティアは貴族ってみんなこんななのかしらと首を傾げた。
Next→チーグルの森
〈その後の宿で〉
「ルーク…なんでマニキュアなんて塗っているの?」
「爪が割れちまったからな。濃い色塗ればわかんねぇだろ?」
確かにその通りだが、何で黒なのだろうか。と思っているうちに左の薬指にだけ紅い模様が浮き出て来た。
「?」
「黒塗るとこの指だけこうなるんだ」
「不思議ね」
「だよなー」
そう言いつつルークは日記を広げる。古代イスパニア語の列ぶ日記にティアは首を傾げた。
「何故フォニック語で書かないの?」
「勉強の一環。使ってねぇと忘れるし」
「勤勉なのね」
「俺より勤勉なのなんて沢山いるだろ?それに綺麗だろ古代語は」
「そうね、貴方の名前みたいにね」
ティアは素で言ったのだろうがルークは思わず真っ赤になってしまった。
「も、もう寝ろよ!俺も日記書いたら寝るから」
「そうさせてもらうわ、おやすみなさい」
「おやすみ」
ルークは明かりを絞って日記を書く。日記というより小説のようなそれはまだ新しい。たまたま飛ばされる前の日に使い切ってしまったのだ。ルークの日記は二つ。一つは逆行前のものだ。
「行かなきゃな」
ルークはそういってこっそり窓から出て行った。
「ようやく見つけた、裏切り者ヴァンデスデルカ」
柔らかな歌声と共に現れた少女にルークは心を踊らせた。
「やはりお前か!ティア!」
ヴァンの叫ぶ声がする。ヴァンにとって彼女の登場は本当に予想外だったのだろう。ルークは心の中で少し笑って謝った。巻き込んでごめんねと。
「なんなんだよ、お前はぁーっ!」
「いかん、ティア、ルーク!」
「これは第七音素!?」
キーンという耳鳴り。ルークはローレライの力を感じた。意識が消える。次に目覚めるのはきっとタタル渓谷だ。
……………………………………………………
「ルーク、ルーク起きて」
ルークはティアに呼ばれ目を覚ました。夜の渓谷はセレニアの花が咲き誇っていて綺麗だ。
「大丈夫?怪我はない?」
「大丈夫だ、ここは?」
「ごめんなさい、わからないの」
「ティアのせいじゃないよ」
ルークは微笑んで言うが、ティアはびっくりしたようだ。
「なんで私の名前…」
「師匠が叫んでたし…」
「あぁ…それで」
ティアは納得したようで、ルークに手を貸して立ち上がらせる。
「っと、ありがとうティア」
「どう…いたしまして」
笑うルークにティアの顔は真っ赤だ。可愛いなぁ、初々しくてとルークはますます笑う。
「海沿いに行ったらバチカル帰れるかな?」
「そうね…でも方角も解らないし」
「大丈夫、なんとかなるよ」
ルークはティアにそう声をかけて水の音のする方へ歩く。
「!ティア、魔物がくる」
「えぇ」
ルークはさっとティアを庇って、猪のような魔物を凪ぐように切る。それはとても鮮やかだった。
「強いのね…」
「違ぇよ、俺は強くなんかない。ティアの方がよっぽど強いよ」
ルークは苦笑しながらいう。
「でも、強いわ」
「ありがとう、さーさくさく行くぞ!」
「えぇ」
川を下ると馬を休めている男にあった。
「首都まで乗せていってくれませんか?」
ティアが申し出ると男は料金は前払いだと言う。
「じゃあこ…」
「これじゃだめか?」
ひゅんと男にペーパーナイフが投げられる。きちんと鞘におさまったそれは見るだけで上物だと知れた。
「これなら」
男はペーパーナイフを懐にしまうと二人を馬車に案内した。
「ルーク、なんでペーパーナイフなんて持っていたの?」
「さぁ?着替えた時に紛れたんじゃねぇの?夜も遅ぇし寝ようぜ」
「そうね…おやすみなさい」
寝息をたてはじめたティアを見ながらルークは笑みを浮かべた。
「ティアのお母さんの形見だもんな、売る訳にはいかねぇよ」
ルークは自分も眠ろうと大きく一つ息を吐くと、目をつぶった。
……………………………………………………
「んー…よく寝た」
馬車の中でルークは大きく伸びをした。ティアはとっくに目を覚ましていたらしく窓の外を見ている。
《そこの辻馬車、道を開けなさい。巻き込まれますよ》
聞き覚えある声にルークは窓の外を見る。真っ白なタルタロスが馬車を追っているところだった。
「あれ、マルクト軍だよな」
「え?ここはキムラスカじゃないの!?」
ルークはのほほんとタルタロスを見ている。あまり必死性は感じられない。
「あ、橋落とされた。キムラスカ行けねぇな…おじさんここで下ろして、エンゲーブまで歩くから」
ルークは辻馬車の男にそう告げ、さっさとおりてしまう。
「ルーク、貴方あそこが何処か知っていたのね?」
「キムラスカにああいう渓谷ないしな。多分タタル渓谷だろうなとは思ってた。それに俺、屋敷に軟禁されてたから外の事あまり知らねぇし」
ルークはやる気なさそうに答える。しかし出てくる魔物は一発で仕留めたりして微妙にガルドは貯まりつつあったりする。
「ルーク、なんでそんなに戦い慣れているの?」
「んー?なんでだろ?体が勝手に動くんだよなー、よっと」
うねうねした魔物の攻撃を避けてルークはそれに剣を突き立てた。
「師匠との修業の成果かな?」
「…………」
ティアはじとりとルークを見たがエンゲーブが見えてきたので、口論を止めた。
……………………………………………………
「……………」
「…あぁ、さっき、陸艦で辻馬車追い掛けてたのにも関わらず間抜けにも逃げられた、ジェイド・カーティス大佐ね」
盗っ人とわざと間違えられたルークはローズ邸にいるジェイドと出会うができた。しばらく、ジェイドは押し黙った。
「貴方は?」
「ルークだ、こっちはティア。言っとくが漆黒の翼じゃねぇからな?漆黒の翼はあんたが取り逃がしてたろ?」
「先程の辻馬車に乗っていたんですか」
ジェイドは苦笑した。まるで、信託の盾の口の悪いあの少年のようだ。紅い髪の導師守護役。
「あぁ」
「その方は犯人ではありませんよ」
「イオ…」
「イオン!すっげー久しぶり覚えてるか?」
入ってきたイオンにルークは抱き着いた。ティアは思わず可愛いと口にしかけて、手で押さえた。男に可愛いは駄目だと以前ヴァンに言われたからだ。
「貴方は…」
「まぁ覚えて無いかもな、お前がうち来たの6年も前だし」
ルークは腕の中のイオンを放してイオンの手の中のものをみる。白い綿毛のようなそれは、獣の毛だ。
「あれ?チーグルの毛じゃん、イオン何処で拾って来たんだ?」
「あぁ、倉庫に落ちていました。結構な量が有りましたからチーグルが犯人でしょうね」
「ほらー、俺達無実じゃねーかよ!」
「すまなかったな」
「別に」
ルークは興味を無くしたのか、てくてくとローズ邸を出ていく。
「あの、貴方は…」
「聖なる焔の光、じゃあなイオン」
そう言い残してルークは扉を締めた。どうやら少し怒っているようだ。無理もない。知り合いに忘れられていたのなら。
「ルーク…ですか…」
「ジェイド」
「なんですか?イオン様」
「…いえなんでもありません」
イオンは安心させるように笑うと、ローズに倉庫の件について話し出した。
……………………………………………………
「パスタのレシピ」を手に入れました。とどっからともなく声が聞こえた気がしてルークは溜息を吐いた。
「どうしたの?ルーク」
「なんでもねぇよ、それよりもう宿戻んねぇ?疲れたし」
「そうね、食材も手に入ったし、今日は休みましょう」
ティアがルークの言葉に賛成して宿に戻るとツインテールの少女が宿屋の主人に話しを聞いているところだった。
「はぅー…イオン様どこいっちゃったんだろ」
「イオンならローズって人ん家だぜ、ジェイドも一緒に居るから」
「あ、本当ですか?ありがとうございます」
「アニス、トクナガ落としましたよ」
「へ…ありがとうございます。グレースさ…ってあれ?いない空耳かなぁ」
首を傾げてトクナガを拾い宿を出ていくアニスをルークはくすくす笑いながら見ている。ティアは呆れたように溜息をついた。
「ルーク…貴方最低ね」
「褒め言葉として受け取っとく」
「………」
そんなルークに絶句したティアは貴族ってみんなこんななのかしらと首を傾げた。
Next→チーグルの森
〈その後の宿で〉
「ルーク…なんでマニキュアなんて塗っているの?」
「爪が割れちまったからな。濃い色塗ればわかんねぇだろ?」
確かにその通りだが、何で黒なのだろうか。と思っているうちに左の薬指にだけ紅い模様が浮き出て来た。
「?」
「黒塗るとこの指だけこうなるんだ」
「不思議ね」
「だよなー」
そう言いつつルークは日記を広げる。古代イスパニア語の列ぶ日記にティアは首を傾げた。
「何故フォニック語で書かないの?」
「勉強の一環。使ってねぇと忘れるし」
「勤勉なのね」
「俺より勤勉なのなんて沢山いるだろ?それに綺麗だろ古代語は」
「そうね、貴方の名前みたいにね」
ティアは素で言ったのだろうがルークは思わず真っ赤になってしまった。
「も、もう寝ろよ!俺も日記書いたら寝るから」
「そうさせてもらうわ、おやすみなさい」
「おやすみ」
ルークは明かりを絞って日記を書く。日記というより小説のようなそれはまだ新しい。たまたま飛ばされる前の日に使い切ってしまったのだ。ルークの日記は二つ。一つは逆行前のものだ。
「行かなきゃな」
ルークはそういってこっそり窓から出て行った。
また退屈な一日が始まった。と日記に書き記しながらルークは苦笑した。庭はペールのお陰で凄く美しいし、朝日が部屋にさしてきてキラキラして綺麗だ。ただ、少しだけ腰が痛い。自業自得だが。ルークが起きるにはまだ早い時間だ。でもルークの目は既に冴えている。
「ルーク?」
「アッシュ、おはよ」
多分一人で寝るには広くてでも二人で寝るには少し狭いベッドの上。ルークは隣で寝ていた恋人の額にキスを落とす。
「今…何時だ…?」
「多分5時くらいかな?も少しゆっくりしてても平気だよ?」
「ガイが来るだろうが」
アッシュはするりとシーツを抜け出す。身に纏っているのはボクサーパンツだけだ。しかもルークのものである。アッシュはあの軍服のせいか普段は黒のビキニっぽい下着だった。本人は嫌だと言っているが。
「大丈夫だ、上手くやる」
「俺も頑張るよ」
そういって笑うルークにアッシュは啄むだけのキスをすると、床の模様とごまかしてある魔法陣の上に立った。
「それじゃ」
「あぁ」
次の瞬間、魔法陣の上にいたアッシュの姿は見当たらなかった。ローレライに聞いたユリアロードの陣はルークの部屋とグレースの部屋を繋いでいる。魔法陣が反応するのはアッシュとルークとカンタビレのみ。他の人間がそこに立っても何も起こらないので、本当に床の模様扱いだ。
「なんで退屈なんて思ったんだろ…?」
ごろりとベッドの上を転がる。そうやることが無いから退屈だったんだろうなとルークは自己完結して起き上がった。手首の細い鎖がなる。左手の薬指には銀の飾り気の無いリング。
「行ってくるね」
リングに口付けて呟く。あと二、三時間すればメイドが起こしに来るだろう。それまでにシャワーを浴びて、情事の跡を消さなきゃならない。シーツはさほど乱れてはいないが聡いものなら気付くだろう。先に部屋の換気だとルークは窓を開けて篭った匂いを外に逃がす。その後シャワーを浴び、着替えたルークは少し悩んだ。
「何もってこ?」
今日だと知ってるからアッシュは気を使ってか見えるところに痕は残していなかった。それに気付いたルークは少し恥ずかしくて。でもうれしいと感じた。
「これならいいかな?」
ルークが服に忍ばせたのは純銀のペーパーナイフ。ペーパーナイフらしい使い方はしたことがないし、これはいつも使っているペーパーナイフより重い。
「大切なものでもないしな」
父に頼んで取り寄せて貰った物だが、さほど値の張る物でもない。ルークにとっては。しかもいわくつき。その店の人間も早く売り払いたかったらしく、言い値で買えたりした。
『ルーク、用意は良い?』
頭の中でローレライの、カンタビレの声がする。
「平気、いつでもこいって感じ」
「ルーク様、おはようございます」
外からメイドの声がする。さぁ、ショータイムの始まりだ。ルークはやる気の無い返事をして、ヴァンのいるであろう応接間に向かった。
NEXT→バチカル・ファブレ邸庭~エンゲーブ
「ルーク?」
「アッシュ、おはよ」
多分一人で寝るには広くてでも二人で寝るには少し狭いベッドの上。ルークは隣で寝ていた恋人の額にキスを落とす。
「今…何時だ…?」
「多分5時くらいかな?も少しゆっくりしてても平気だよ?」
「ガイが来るだろうが」
アッシュはするりとシーツを抜け出す。身に纏っているのはボクサーパンツだけだ。しかもルークのものである。アッシュはあの軍服のせいか普段は黒のビキニっぽい下着だった。本人は嫌だと言っているが。
「大丈夫だ、上手くやる」
「俺も頑張るよ」
そういって笑うルークにアッシュは啄むだけのキスをすると、床の模様とごまかしてある魔法陣の上に立った。
「それじゃ」
「あぁ」
次の瞬間、魔法陣の上にいたアッシュの姿は見当たらなかった。ローレライに聞いたユリアロードの陣はルークの部屋とグレースの部屋を繋いでいる。魔法陣が反応するのはアッシュとルークとカンタビレのみ。他の人間がそこに立っても何も起こらないので、本当に床の模様扱いだ。
「なんで退屈なんて思ったんだろ…?」
ごろりとベッドの上を転がる。そうやることが無いから退屈だったんだろうなとルークは自己完結して起き上がった。手首の細い鎖がなる。左手の薬指には銀の飾り気の無いリング。
「行ってくるね」
リングに口付けて呟く。あと二、三時間すればメイドが起こしに来るだろう。それまでにシャワーを浴びて、情事の跡を消さなきゃならない。シーツはさほど乱れてはいないが聡いものなら気付くだろう。先に部屋の換気だとルークは窓を開けて篭った匂いを外に逃がす。その後シャワーを浴び、着替えたルークは少し悩んだ。
「何もってこ?」
今日だと知ってるからアッシュは気を使ってか見えるところに痕は残していなかった。それに気付いたルークは少し恥ずかしくて。でもうれしいと感じた。
「これならいいかな?」
ルークが服に忍ばせたのは純銀のペーパーナイフ。ペーパーナイフらしい使い方はしたことがないし、これはいつも使っているペーパーナイフより重い。
「大切なものでもないしな」
父に頼んで取り寄せて貰った物だが、さほど値の張る物でもない。ルークにとっては。しかもいわくつき。その店の人間も早く売り払いたかったらしく、言い値で買えたりした。
『ルーク、用意は良い?』
頭の中でローレライの、カンタビレの声がする。
「平気、いつでもこいって感じ」
「ルーク様、おはようございます」
外からメイドの声がする。さぁ、ショータイムの始まりだ。ルークはやる気の無い返事をして、ヴァンのいるであろう応接間に向かった。
NEXT→バチカル・ファブレ邸庭~エンゲーブ