気まぐれにNL・BLetc.健全から危ないモノまで。
今のとこメインはDMCとTOA。
「…これがアリエッタのお母様…ですか…」
イオンは少々引き攣った笑みを浮かべた。それはそうだろう。目の前に居るのは己の身の丈のゆうに3倍はあろうかという《ライガクイーン》。アッシュも驚いていて声が出ないようだ。
「はじめまして、ライガクイーン…信託の盾騎士団特務師団、副師団長謙導師守護役のグレースです」
そんな中、グレースはライガクイーンもといライガママにのほほんと挨拶している。
「ママもグレースによろしくって」
久しぶりに母に会えたのが嬉しいのか、アリエッタははしゃいでいた。そんなアリエッタを見てアッシュとイオンも硬直が溶けたのか、ライガママに挨拶をした。
「じゃあ、お昼にしましょうか?」
「そうだな…導師、暫くアリエッタとここにいろ、直ぐ戻る。グレース」
「はい、ではアリエッタ、このシートを敷いて待っていてくださいね」
「アリエッタ、頑張る!…です」
アリエッタはグレースに微笑みかけると更に森の深い所に入って行く二人を見守った。二人が森の奥に入って行った理由は解っていたから。しばらくして二人はズルズルと何かを引きずって来た。何だか呻き声がする。
「新鮮な方がいいでしょうから生け捕りにしてきました」
二人が引きずってきたのは猪のようなモンスターだった。かなりの大物だ。
「じゃあお昼にしましょう。アリエッタ、シートありがとうございます」
グレースがアリエッタに微笑みかけると、アリエッタは「グレースもママみたい…」と言って抱き着いてきた。その場には微妙な空気が流れた。
……………………
「…どうしたの…ママ?」
ライガクイーンがアッシュとグレースの匂いを嗅いで首を傾げていた。理由をアリエッタが話す。
「アッシュとグレース、同じ匂いがするって…変だって」
「「…………」」
その言葉にグレースは固まり、アッシュは手に持っていた紙コップを握り潰してしまった。ちょうど飲み終わったところだったので、汚れはしなかったが。
『どうする?』
『今の段階だとまだ導師はヴァン側だが…』
『動物って凄いよな』
『あぁ』
二人が回線で遠い目をしながら話していると、アリエッタがお友達の様子を見に行ってくると言っていってしまった。
「グレース…あなたは自分がレプリカだと言いましたね」
「はい」
「あなたは…」
「導師、悪いが踏み込み過ぎだ。あんたがヴァン側にいるかぎり言えない」
「…預言の無い世界に反対なんですか?」
「違う。レプリカ世界に反対なんだ」
問うイオンにアッシュが首を振り答えた。
「導師が預言を嫌っているのは知っている」
「そして、私たちは預言のない世界を知っています。イオン様は自らの死を秘預言で知り預言に縛られた世界を壊したいのですか?」
「そうです。僕は預言の為に死ぬ…そう預言に書いてありました。だから僕は預言に制約を受けないレプリカ世界を作りたいのです」
「…レプリカイオンは俺に預言を詠んで乖離した。俺の目の前で…、もう一人のレプリカイオンは生まれたことを呪いながら死んでいった」
「何を…」
イオンは戸惑った。グレースの言っていることに、その声が変わったことに、仮面を外したその顔が…
「アッシュ…と同じ顔…」
「俺はレプリカルーク…愚かなレプリカ。…アッシュの…ルーク・フォン・ファブレのレプリカだ」
「ルーク、お前まだそんな事を」
「いいんだ、俺がレプリカなのは変わらないし、イオンは解ってくれると思うんだ。だって、俺達が戻ってきたのはより多くの人間を救う為だろ?」
ルークは苦笑しながらそう言った。その目はどこか悲しげで、逝った人々に思いを馳せている…そんな感じだった。
「…今、戻ってきたと言いましたね?」
「……あぁ、俺とこいつは別の未来で死んだ。ローレライに心遺りはないかと問われてな」
「だから救えなかった人達を救いたくて戻ってきたんだ」
目の前にいる自分もその対象に入っていることにイオンは驚いた。自分は直接〈ルーク〉と関わったことはないはずなのに。
「それに秘預言の通りになるの釈だし…だって死を詠んではいけない預言に俺達は死ぬとはっきり書かれていた、これってなんかおかしいだろ?」
「つまりあなたたちはレプリカ世界には反対だが、預言のない世界には反対ではないのですね」
二人は頷いて言う。
「レプリカ世界は沢山の人を犠牲にする」
「死ななくてもいい人達が…目の前で死んでいくのを見ているなんて、もうたくさんなんだ」
「アッシュもグレースも優しいんですね」
「優しいのはイオンだよ」
「導師、あんたがヴァンにこの事を言うつもりなら俺達は力付くでヴァンを止める。ローレライも開放する例え命を賭けても」
「幸せになって欲しいんだ」
そう笑うルークの笑顔はやっぱりどこか悲しげで、アッシュも悲しげな目をしていた。
「もう誰も死ぬところなんて見たくない」
「これは誰かの為じゃない、自分の為なんだ」
「勝てませんね、貴方達には」
「イオン?」
「言いませんよ、ヴァンには。確かにレプリカ世界は少々極端ではあると思っていましたし、レプリカ情報を抜くと死んでしまう人間もいると言います。アリエッタを死なせる訳にはいきませんからね」
イオンの世界は何処までもイオンとアリエッタを中心に回っているらしい。アッシュとルークが苦笑するとイオンは笑いながら言った。
「そのかわり、仲間ハズレは嫌ですからね」
その言葉にびっくりしたのか二人は顔を見合わせ、今度は笑って頷いた。
Next→マルクト・グランコクマ
「…成る程、僕のレプリカはそんな性格なんですか」
「はぃ…」
ルークは自室でイオンにレプリカイオンの事を説明していた。自室は自室でもバチカルのファブレ邸の自室である。同行者はアッシュとカンタビレ、ヴァンであったが、ヴァンは笑顔でイオンに締め出しをくらい、ここにはイオンとアッシュとカンタビレしかいなかった。因みにアッシュはヴァンの配慮でグレースと同じ仮面を付けていたが、今は外している。
「おしいですね、出来ればレプリカイオンにも生きていてほしい」
「そこは俺がどうにかしますよ導師」
「カンタビレは本当になんでもできますね」
「イオン様これローレライなんですよ」
「こらルーク、仮にもお父様にこれってなんですか」
「(いくらルークが第七音素で出来ているとはいえ、それは違うだろ…/汗)」
アッシュは心の中で思わず突っ込んだ。ルークはイオン相手にはどうしても〈グレース〉の口調になってしまうらしい。
「カンタビレがローレライなんですか?」
「うん、まぁね」
「ヴァンも哀れですね…自分の部下が消滅させたいローレライだなんて」
「アハハそうだねー」
絶対二人ともそう思っていないことはひを見るより明らかだったが、赤毛二人に突っ込む勇気はなかった。
イオンは少々引き攣った笑みを浮かべた。それはそうだろう。目の前に居るのは己の身の丈のゆうに3倍はあろうかという《ライガクイーン》。アッシュも驚いていて声が出ないようだ。
「はじめまして、ライガクイーン…信託の盾騎士団特務師団、副師団長謙導師守護役のグレースです」
そんな中、グレースはライガクイーンもといライガママにのほほんと挨拶している。
「ママもグレースによろしくって」
久しぶりに母に会えたのが嬉しいのか、アリエッタははしゃいでいた。そんなアリエッタを見てアッシュとイオンも硬直が溶けたのか、ライガママに挨拶をした。
「じゃあ、お昼にしましょうか?」
「そうだな…導師、暫くアリエッタとここにいろ、直ぐ戻る。グレース」
「はい、ではアリエッタ、このシートを敷いて待っていてくださいね」
「アリエッタ、頑張る!…です」
アリエッタはグレースに微笑みかけると更に森の深い所に入って行く二人を見守った。二人が森の奥に入って行った理由は解っていたから。しばらくして二人はズルズルと何かを引きずって来た。何だか呻き声がする。
「新鮮な方がいいでしょうから生け捕りにしてきました」
二人が引きずってきたのは猪のようなモンスターだった。かなりの大物だ。
「じゃあお昼にしましょう。アリエッタ、シートありがとうございます」
グレースがアリエッタに微笑みかけると、アリエッタは「グレースもママみたい…」と言って抱き着いてきた。その場には微妙な空気が流れた。
……………………
「…どうしたの…ママ?」
ライガクイーンがアッシュとグレースの匂いを嗅いで首を傾げていた。理由をアリエッタが話す。
「アッシュとグレース、同じ匂いがするって…変だって」
「「…………」」
その言葉にグレースは固まり、アッシュは手に持っていた紙コップを握り潰してしまった。ちょうど飲み終わったところだったので、汚れはしなかったが。
『どうする?』
『今の段階だとまだ導師はヴァン側だが…』
『動物って凄いよな』
『あぁ』
二人が回線で遠い目をしながら話していると、アリエッタがお友達の様子を見に行ってくると言っていってしまった。
「グレース…あなたは自分がレプリカだと言いましたね」
「はい」
「あなたは…」
「導師、悪いが踏み込み過ぎだ。あんたがヴァン側にいるかぎり言えない」
「…預言の無い世界に反対なんですか?」
「違う。レプリカ世界に反対なんだ」
問うイオンにアッシュが首を振り答えた。
「導師が預言を嫌っているのは知っている」
「そして、私たちは預言のない世界を知っています。イオン様は自らの死を秘預言で知り預言に縛られた世界を壊したいのですか?」
「そうです。僕は預言の為に死ぬ…そう預言に書いてありました。だから僕は預言に制約を受けないレプリカ世界を作りたいのです」
「…レプリカイオンは俺に預言を詠んで乖離した。俺の目の前で…、もう一人のレプリカイオンは生まれたことを呪いながら死んでいった」
「何を…」
イオンは戸惑った。グレースの言っていることに、その声が変わったことに、仮面を外したその顔が…
「アッシュ…と同じ顔…」
「俺はレプリカルーク…愚かなレプリカ。…アッシュの…ルーク・フォン・ファブレのレプリカだ」
「ルーク、お前まだそんな事を」
「いいんだ、俺がレプリカなのは変わらないし、イオンは解ってくれると思うんだ。だって、俺達が戻ってきたのはより多くの人間を救う為だろ?」
ルークは苦笑しながらそう言った。その目はどこか悲しげで、逝った人々に思いを馳せている…そんな感じだった。
「…今、戻ってきたと言いましたね?」
「……あぁ、俺とこいつは別の未来で死んだ。ローレライに心遺りはないかと問われてな」
「だから救えなかった人達を救いたくて戻ってきたんだ」
目の前にいる自分もその対象に入っていることにイオンは驚いた。自分は直接〈ルーク〉と関わったことはないはずなのに。
「それに秘預言の通りになるの釈だし…だって死を詠んではいけない預言に俺達は死ぬとはっきり書かれていた、これってなんかおかしいだろ?」
「つまりあなたたちはレプリカ世界には反対だが、預言のない世界には反対ではないのですね」
二人は頷いて言う。
「レプリカ世界は沢山の人を犠牲にする」
「死ななくてもいい人達が…目の前で死んでいくのを見ているなんて、もうたくさんなんだ」
「アッシュもグレースも優しいんですね」
「優しいのはイオンだよ」
「導師、あんたがヴァンにこの事を言うつもりなら俺達は力付くでヴァンを止める。ローレライも開放する例え命を賭けても」
「幸せになって欲しいんだ」
そう笑うルークの笑顔はやっぱりどこか悲しげで、アッシュも悲しげな目をしていた。
「もう誰も死ぬところなんて見たくない」
「これは誰かの為じゃない、自分の為なんだ」
「勝てませんね、貴方達には」
「イオン?」
「言いませんよ、ヴァンには。確かにレプリカ世界は少々極端ではあると思っていましたし、レプリカ情報を抜くと死んでしまう人間もいると言います。アリエッタを死なせる訳にはいきませんからね」
イオンの世界は何処までもイオンとアリエッタを中心に回っているらしい。アッシュとルークが苦笑するとイオンは笑いながら言った。
「そのかわり、仲間ハズレは嫌ですからね」
その言葉にびっくりしたのか二人は顔を見合わせ、今度は笑って頷いた。
Next→マルクト・グランコクマ
「…成る程、僕のレプリカはそんな性格なんですか」
「はぃ…」
ルークは自室でイオンにレプリカイオンの事を説明していた。自室は自室でもバチカルのファブレ邸の自室である。同行者はアッシュとカンタビレ、ヴァンであったが、ヴァンは笑顔でイオンに締め出しをくらい、ここにはイオンとアッシュとカンタビレしかいなかった。因みにアッシュはヴァンの配慮でグレースと同じ仮面を付けていたが、今は外している。
「おしいですね、出来ればレプリカイオンにも生きていてほしい」
「そこは俺がどうにかしますよ導師」
「カンタビレは本当になんでもできますね」
「イオン様これローレライなんですよ」
「こらルーク、仮にもお父様にこれってなんですか」
「(いくらルークが第七音素で出来ているとはいえ、それは違うだろ…/汗)」
アッシュは心の中で思わず突っ込んだ。ルークはイオン相手にはどうしても〈グレース〉の口調になってしまうらしい。
「カンタビレがローレライなんですか?」
「うん、まぁね」
「ヴァンも哀れですね…自分の部下が消滅させたいローレライだなんて」
「アハハそうだねー」
絶対二人ともそう思っていないことはひを見るより明らかだったが、赤毛二人に突っ込む勇気はなかった。
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アッシュは信託の盾に所属すると同時にローレライ教団にも所属している。必然的にアッシュの補佐官をしているグレース(ルーク)もそうだ。彼等には特務師団の仕事以外にもう一つ仕事があった。それは《導師守護役》である。年が近いという理由から選ばれたそれは、どうやらカンタビレが手を回したようだった。
「導師、何時もこんなことしてんのか?」
「えぇ、アリエッタを虐める輩は例え蟲一匹でも容赦しません」
アリエッタは絶対に蟲は平気だし、寧ろ食べ物の一種だと思っていそうだが、その辺りは本人に聞かなければ解らないだろう。
「アリエッタ可愛いですからね、ちょっかい出したがる人間が多くて大変ですね、イオン様」
今彼等がいるのはローレライ教団の建物裏である。目の前には軽く半屍の山が築かれていた。やったのは殆どイオンだ。アッシュとグレースはたまたま居合わせたのだ。このある意味恐ろしい光景に。
「証拠隠滅にハートレスサークルかけときましょうか?」
「お願いします、グレース」
「アッシュ、サンダーブレイドお願いします」
どうやらFOF変化で一気に片付ける気らしい。まぁ、確かにそのほうが、効率は良い。その後凄い音がして信託の盾兵が見に行くとえぐれた地面と、服だけぼろぼろな信託の盾兵が山積みにされているだけだった。
「導師、一体何処が悪いんだ?」
「わかりません。ただ、モースの用意する食事をたべるとどうしても吐き気が」
全然ぴんぴんしているイオンにアッシュが聞くとそんな答えが返って来た。
「明らかに毒盛られてますよ、それ。よかったら私が作りますよ?」
「本当ですか?」
「お前飯作れたか?」
「バチカルで修行してきましたから」
「楽しみにしていますね」
試しに昼食をグレースが作る事になり、それならアリエッタも連れてエンゲーブの北にあるアリエッタの母が居る森でピクニックでもしようということになった。
「僕、アリエッタのお母様に会うのはじめてですよ」
「私達もですよ、居る場所を知っているだけなんです」
グレースが自室のキッチンの中でオニオンスープを作っている。鍋でジャガ芋を蒸してマッシュポテトを作ったり、フルーツサンドやチキンサンドも用意されていた。
「良い匂いですね、これは?」
「人参のグラッセですよ。私、人参苦手だったんですけどこれのおかげで克服できたので、アッシュの人参の嫌いも直してしまおうかと」
今ここにアッシュが居ないのをいいことにグレースはそんなことを言っている。アッシュはアリエッタを迎えに行ったのだ。アリエッタは部屋で音素学の勉強をしている時間だった。
「イオン様、スープ味見してもらえますか?」
「いいですよ…………美味しい…、グレースは何時でもアッシュのお嫁さんになれますね」
「男同士じゃ結婚出来ませんよ」
グレースは苦笑しながらバスケットにそれを詰めた。スープは保温性の高い容器に移し、蓋をしっかりと締める。全部詰め終わった頃、アッシュがアリエッタを連れて戻って来た。
「イオン様……アリエッタも一緒にお出かけ…いいの……?」
「いいですよアリエッタ、今日はエンゲーブの近くの森までピクニックなんです。案内してくれますか」
「はい!…です」
ダアトからエンゲーブ近くの森までは結構距離があるが、アリエッタの魔物に運んでもらえば早く着く。念のため、外泊の許可をヴァンに(嫌々ながら)貰いに行き、スコア嫌いなヴァンにイオンの食事にモースが毒を盛っていた事を教えると四人は早々にダアトをあとにした。
Next→北の森
〈料理制作中〉
「イオン様はレプリカ計画に賛成なんですね」
「えぇ、グレースは違うんですか?」
「……私も実はレプリカなんです。でもヴァンの計画には賛成しきれない。被験者を殺してまで、私は存在していたくはないのです」
「グレースの被験者は生きているんですね」
「はい、それが私にとっての救いです。でも私は彼から日だまりを奪ってしまうことになりました」
グレースは天を見上げ、溜息を吐いた。表情は仮面に隠れて解らない。
「グレースの被験者は今どこに?」
「さぁ?でも案外近くに居るかも知れませんよ」
そう笑うグレースの笑顔が追及を許さなかったから、イオンは尋ねるのをやめ、いつか彼から教えてもらう事が出来るまで待つことにした。それはそう遠くない未来。
「導師、何時もこんなことしてんのか?」
「えぇ、アリエッタを虐める輩は例え蟲一匹でも容赦しません」
アリエッタは絶対に蟲は平気だし、寧ろ食べ物の一種だと思っていそうだが、その辺りは本人に聞かなければ解らないだろう。
「アリエッタ可愛いですからね、ちょっかい出したがる人間が多くて大変ですね、イオン様」
今彼等がいるのはローレライ教団の建物裏である。目の前には軽く半屍の山が築かれていた。やったのは殆どイオンだ。アッシュとグレースはたまたま居合わせたのだ。このある意味恐ろしい光景に。
「証拠隠滅にハートレスサークルかけときましょうか?」
「お願いします、グレース」
「アッシュ、サンダーブレイドお願いします」
どうやらFOF変化で一気に片付ける気らしい。まぁ、確かにそのほうが、効率は良い。その後凄い音がして信託の盾兵が見に行くとえぐれた地面と、服だけぼろぼろな信託の盾兵が山積みにされているだけだった。
「導師、一体何処が悪いんだ?」
「わかりません。ただ、モースの用意する食事をたべるとどうしても吐き気が」
全然ぴんぴんしているイオンにアッシュが聞くとそんな答えが返って来た。
「明らかに毒盛られてますよ、それ。よかったら私が作りますよ?」
「本当ですか?」
「お前飯作れたか?」
「バチカルで修行してきましたから」
「楽しみにしていますね」
試しに昼食をグレースが作る事になり、それならアリエッタも連れてエンゲーブの北にあるアリエッタの母が居る森でピクニックでもしようということになった。
「僕、アリエッタのお母様に会うのはじめてですよ」
「私達もですよ、居る場所を知っているだけなんです」
グレースが自室のキッチンの中でオニオンスープを作っている。鍋でジャガ芋を蒸してマッシュポテトを作ったり、フルーツサンドやチキンサンドも用意されていた。
「良い匂いですね、これは?」
「人参のグラッセですよ。私、人参苦手だったんですけどこれのおかげで克服できたので、アッシュの人参の嫌いも直してしまおうかと」
今ここにアッシュが居ないのをいいことにグレースはそんなことを言っている。アッシュはアリエッタを迎えに行ったのだ。アリエッタは部屋で音素学の勉強をしている時間だった。
「イオン様、スープ味見してもらえますか?」
「いいですよ…………美味しい…、グレースは何時でもアッシュのお嫁さんになれますね」
「男同士じゃ結婚出来ませんよ」
グレースは苦笑しながらバスケットにそれを詰めた。スープは保温性の高い容器に移し、蓋をしっかりと締める。全部詰め終わった頃、アッシュがアリエッタを連れて戻って来た。
「イオン様……アリエッタも一緒にお出かけ…いいの……?」
「いいですよアリエッタ、今日はエンゲーブの近くの森までピクニックなんです。案内してくれますか」
「はい!…です」
ダアトからエンゲーブ近くの森までは結構距離があるが、アリエッタの魔物に運んでもらえば早く着く。念のため、外泊の許可をヴァンに(嫌々ながら)貰いに行き、スコア嫌いなヴァンにイオンの食事にモースが毒を盛っていた事を教えると四人は早々にダアトをあとにした。
Next→北の森
〈料理制作中〉
「イオン様はレプリカ計画に賛成なんですね」
「えぇ、グレースは違うんですか?」
「……私も実はレプリカなんです。でもヴァンの計画には賛成しきれない。被験者を殺してまで、私は存在していたくはないのです」
「グレースの被験者は生きているんですね」
「はい、それが私にとっての救いです。でも私は彼から日だまりを奪ってしまうことになりました」
グレースは天を見上げ、溜息を吐いた。表情は仮面に隠れて解らない。
「グレースの被験者は今どこに?」
「さぁ?でも案外近くに居るかも知れませんよ」
そう笑うグレースの笑顔が追及を許さなかったから、イオンは尋ねるのをやめ、いつか彼から教えてもらう事が出来るまで待つことにした。それはそう遠くない未来。
アッシュは今、もの凄くうろたえていた。何にかと言えば至極明解。カンタビレが連れて来たアッシュの補佐役(自称)の少年にだ。
「『はじめまして』アッシュ。グレースと言います。よろしく」
どう聞いた所でルークの声だ。と言っても喋り方が違うので大分違った印象を受ける。おそらくヴァン辺りは気付けないだろう。それに音譜帯に居た頃ルークは声帯模写を見よう見真似で習得していた。この声は『レム』の声だ。腰でクロスするように二本の剣をさしている。
「…はじめまして……グレース」
そういってアッシュもグレースに手を差し出した。そのまま強く握って抱き寄せる。正直な所、顔の仮面は大変邪魔だ。
『なにしてんた、屑。こんなとこで』
『だってアッシュに先手打たれたから仕返し。ちゃんと勉強はしたよ』
実際ルークと別れて行動し始めてから半年が経っている。ルークはもの覚えが早いので、本当に半年で基礎はマスターしたのだろう。この分だと、時間があまって他の専門知識迄習得していそうだ。
「よろしくお願いしますね、アッシュ。あ、ラルゴは何処にいますか?」
ルークは手に大きな板を抱えている。
「今は自室にいるはずだ。何か用でもあるのか?」
『ディストの次はラルゴ丸め込むんだ』
アッシュはルークの手の中の物を見て成る程と言った。ルークが持っていたのはナタリアの肖像画であった。
…………………………………………………………………………………………………………
ラルゴはとても困っていた。それはグレースという少年(なんでもアッシュの補佐官らしい)が置いて行った、キムラスカ・ランバルディアの王女、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの肖像画だった。グレースもアッシュもラルゴの事情を知っているようで、ニッコリ笑って「受け取れ」と言ってきたのだ。
「アッシュ…笑い方がカンタビレに似てきたな…」
何だか底の見えない黒い笑みだ。導師イオンもよくやる。特にアリエッタを虐めた人間には容赦ない。とても病気には見えない感じだ。実際に病気かどうかはモースしか知らないのだが。
「メリル…」
母親に似てとてもかわいらしい少女の肖像画をラルゴはぎゅっと抱きしめると、それを壁に掛けた。グレースは定期的にナタリアの近況を聞かせるとも言い残していた。この際そのことばに甘える事にしよう。で、二人がヴァンを虐めて(?)遊んでいるのにも目をつぶることにした。何事も首を突っ込み過ぎるのはいけないのだ。
後日、ヴァンが持ってきたグレース用の軍服にアッシュがキレてヴァンはしこたま殴られていたが、ラルゴはそれは見なかった事にした。あれはヴァンが悪い。
Next→ダアト・ローレライ教団総本山
「グレース、アッシュの補佐役用の軍服を用意した」
そう言ってアッシュの隣を歩くグレースをヴァンが呼び止めたのは二人が肩慣らしにこっそりザレッホ火山に忍び込んで魔物退治をしてきた帰りであった。因みにグレースはカンタビレの『弟子』であるためヴァンは無条件でアッシュの隣にいることを許している。カンタビレは《大詠師派》ではないが、仕事はとても出来るし、アッシュはカンタビレに懐いて(?)いて、その弟子のグレースとも面識があるようだった。それに信託の盾にはアッシュと同年代の兵士は少ない。友人にもピッタリだと判断したらしい。
「ラインはアッシュの髪の色で《私》が作ったが」
アッシュは物凄く嫌な予感がした。ルークはよく解らずキョトンとしている。ルークはコーラル城のあの部屋がヴァンの仕業だとは知らないのだ。因みにあのあとアッシュが知ったのは六神将の軍服は全てヴァンが一つ一つ手縫いで仕上げた代物だったということだ。仕上がっていないときはアッシュは他の信託の盾兵と同じような物を着ていたのだが、やはり着慣れたものの方が落ち着く。その時聞いて後悔したのだった。知りたくなかったと。
「グレースも脚のラインが綺麗だからニーハイブーツも用意した」
「もってなんだもって」
「お前の脚も綺麗だろう」
ヴァンの変態臭い発言にアッシュはぞっとしながら、隣に居るルークを見た。ルークはアッシュの脚を見て「確かに綺麗な脚線美ですよね」とか言っている。
「採寸を合わせたいから着替えなさい」
ヴァンはそう言って何処からともなくお着替えボックスを取り出した。
「……ここで…ですか?」
「嫌なら部屋で着替えてきなさい」
そう言うとヴァンはルークに軍服の入った袋を渡すと直ぐ近くにある《グレースに与えられた私室》を指した。
「…わかりました。アッシュ、直ぐ戻ってきますから」
『ヴァンでも虐めて待ってて』
「…あぁ」
回線で囁かれた言葉に、アッシュは頷くと、ルークを見送った。
========================================
暫くして、ルークがまた回線を繋いできた。
『どうした』
『…ぅん…、アッシュ…出てきてもビックリしないでね』
カチャリとドアノブの回る音がして、ルークが部屋から出てきた。アッシュはルークを見た瞬間ボッとまるで顔から火が出るくらい真っ赤になった。
「グレース、キツイ所はないか」
「大丈夫です」
ルークの心の中のカッコイイヴァン師匠像は完璧に崩壊していた。個人的にはこの服装は大問題だが、隠密活動するにはこちらの方がグレース=ルークだとばれにくいといったらばれにくい。
「うむ、私の目に狂いはなかった」
「100%狂ってんじゃねーか!屑がぁー!」
アッシュによるエクスプロードがヴァンに直撃した。ヴァンがルークに渡したのは、「アリエッタの軍服に近い物+スパッツ+アッシュの外套に似た物+ニーハイブーツ」完璧に変態だ。アッシュはエクスプロードが命中した後もヴァンの襟首を掴んで顔をたこ殴りにしていた。
「お前も何か言え!」
「はい。ヴァン総長がこんなに変態だとは思いませんでした。アッシュ、こんな人間としてダメな総長は置いておいて、カンタビレの所に行きましょう。アッシュの手が汚れます」
ヴァンはアッシュにかけられたエクスプロードと暴力よりもルークの言葉の方が堪えたらしい。ルークは証拠隠滅のため一応ヴァンにキュアをかけるとアッシュを連れて何事もなかったかのように去って行った。
その後、ルークはこの軍服を断って更に凄いのがきたら嫌なので、素直に着ることにしたのだが、アッシュは何時も渋い顔をしていたと言う。
「『はじめまして』アッシュ。グレースと言います。よろしく」
どう聞いた所でルークの声だ。と言っても喋り方が違うので大分違った印象を受ける。おそらくヴァン辺りは気付けないだろう。それに音譜帯に居た頃ルークは声帯模写を見よう見真似で習得していた。この声は『レム』の声だ。腰でクロスするように二本の剣をさしている。
「…はじめまして……グレース」
そういってアッシュもグレースに手を差し出した。そのまま強く握って抱き寄せる。正直な所、顔の仮面は大変邪魔だ。
『なにしてんた、屑。こんなとこで』
『だってアッシュに先手打たれたから仕返し。ちゃんと勉強はしたよ』
実際ルークと別れて行動し始めてから半年が経っている。ルークはもの覚えが早いので、本当に半年で基礎はマスターしたのだろう。この分だと、時間があまって他の専門知識迄習得していそうだ。
「よろしくお願いしますね、アッシュ。あ、ラルゴは何処にいますか?」
ルークは手に大きな板を抱えている。
「今は自室にいるはずだ。何か用でもあるのか?」
『ディストの次はラルゴ丸め込むんだ』
アッシュはルークの手の中の物を見て成る程と言った。ルークが持っていたのはナタリアの肖像画であった。
…………………………………………………………………………………………………………
ラルゴはとても困っていた。それはグレースという少年(なんでもアッシュの補佐官らしい)が置いて行った、キムラスカ・ランバルディアの王女、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの肖像画だった。グレースもアッシュもラルゴの事情を知っているようで、ニッコリ笑って「受け取れ」と言ってきたのだ。
「アッシュ…笑い方がカンタビレに似てきたな…」
何だか底の見えない黒い笑みだ。導師イオンもよくやる。特にアリエッタを虐めた人間には容赦ない。とても病気には見えない感じだ。実際に病気かどうかはモースしか知らないのだが。
「メリル…」
母親に似てとてもかわいらしい少女の肖像画をラルゴはぎゅっと抱きしめると、それを壁に掛けた。グレースは定期的にナタリアの近況を聞かせるとも言い残していた。この際そのことばに甘える事にしよう。で、二人がヴァンを虐めて(?)遊んでいるのにも目をつぶることにした。何事も首を突っ込み過ぎるのはいけないのだ。
後日、ヴァンが持ってきたグレース用の軍服にアッシュがキレてヴァンはしこたま殴られていたが、ラルゴはそれは見なかった事にした。あれはヴァンが悪い。
Next→ダアト・ローレライ教団総本山
「グレース、アッシュの補佐役用の軍服を用意した」
そう言ってアッシュの隣を歩くグレースをヴァンが呼び止めたのは二人が肩慣らしにこっそりザレッホ火山に忍び込んで魔物退治をしてきた帰りであった。因みにグレースはカンタビレの『弟子』であるためヴァンは無条件でアッシュの隣にいることを許している。カンタビレは《大詠師派》ではないが、仕事はとても出来るし、アッシュはカンタビレに懐いて(?)いて、その弟子のグレースとも面識があるようだった。それに信託の盾にはアッシュと同年代の兵士は少ない。友人にもピッタリだと判断したらしい。
「ラインはアッシュの髪の色で《私》が作ったが」
アッシュは物凄く嫌な予感がした。ルークはよく解らずキョトンとしている。ルークはコーラル城のあの部屋がヴァンの仕業だとは知らないのだ。因みにあのあとアッシュが知ったのは六神将の軍服は全てヴァンが一つ一つ手縫いで仕上げた代物だったということだ。仕上がっていないときはアッシュは他の信託の盾兵と同じような物を着ていたのだが、やはり着慣れたものの方が落ち着く。その時聞いて後悔したのだった。知りたくなかったと。
「グレースも脚のラインが綺麗だからニーハイブーツも用意した」
「もってなんだもって」
「お前の脚も綺麗だろう」
ヴァンの変態臭い発言にアッシュはぞっとしながら、隣に居るルークを見た。ルークはアッシュの脚を見て「確かに綺麗な脚線美ですよね」とか言っている。
「採寸を合わせたいから着替えなさい」
ヴァンはそう言って何処からともなくお着替えボックスを取り出した。
「……ここで…ですか?」
「嫌なら部屋で着替えてきなさい」
そう言うとヴァンはルークに軍服の入った袋を渡すと直ぐ近くにある《グレースに与えられた私室》を指した。
「…わかりました。アッシュ、直ぐ戻ってきますから」
『ヴァンでも虐めて待ってて』
「…あぁ」
回線で囁かれた言葉に、アッシュは頷くと、ルークを見送った。
========================================
暫くして、ルークがまた回線を繋いできた。
『どうした』
『…ぅん…、アッシュ…出てきてもビックリしないでね』
カチャリとドアノブの回る音がして、ルークが部屋から出てきた。アッシュはルークを見た瞬間ボッとまるで顔から火が出るくらい真っ赤になった。
「グレース、キツイ所はないか」
「大丈夫です」
ルークの心の中のカッコイイヴァン師匠像は完璧に崩壊していた。個人的にはこの服装は大問題だが、隠密活動するにはこちらの方がグレース=ルークだとばれにくいといったらばれにくい。
「うむ、私の目に狂いはなかった」
「100%狂ってんじゃねーか!屑がぁー!」
アッシュによるエクスプロードがヴァンに直撃した。ヴァンがルークに渡したのは、「アリエッタの軍服に近い物+スパッツ+アッシュの外套に似た物+ニーハイブーツ」完璧に変態だ。アッシュはエクスプロードが命中した後もヴァンの襟首を掴んで顔をたこ殴りにしていた。
「お前も何か言え!」
「はい。ヴァン総長がこんなに変態だとは思いませんでした。アッシュ、こんな人間としてダメな総長は置いておいて、カンタビレの所に行きましょう。アッシュの手が汚れます」
ヴァンはアッシュにかけられたエクスプロードと暴力よりもルークの言葉の方が堪えたらしい。ルークは証拠隠滅のため一応ヴァンにキュアをかけるとアッシュを連れて何事もなかったかのように去って行った。
その後、ルークはこの軍服を断って更に凄いのがきたら嫌なので、素直に着ることにしたのだが、アッシュは何時も渋い顔をしていたと言う。
バチカルの屋敷に着くまでルークは馬車の中で眠っていた。このガタゴトという揺れは実に眠気を誘うのだ。ルークの枕になっているのはコーラル城にあった巨大テディベアだ。
「ルーク様、着きましたよ」
「ぅー…?」
ルークは唸ると声をかけてきた少年を見上げた。
「…ガイ……」
「はい?なんですか?」
「後で…部屋、来て………ぐぅ」
軽く寝言と区別が付かない感じだ。ガイはルークはどうしてしまったのだろうと頭を抱えて悩んだが、結論は出なかったのでルークを抱き抱えて部屋に連れて行くことにした。
…………………………………………………………………………………………………………
『アッシュ、アッシュ聞こえる?』
『あぁ、何だ?』
『バチカル着いたよ』
『そうか、こちらも今ダアトに着いた所だ』
『ローレライは居る?』
『いや?モースに僻地の視察命じられてどっか行った』
ルークはクマに向かって何か話し掛けている。ガイは今度こそルークを医者に見せるべきだと思った。明らかにどうかしてしまっている。
「あ、ガイ。何時から居たんだ?」
ルークはベッドから降りてガイに近寄るが、その歩き方は少しよたよたしていて危なっかしい。
「少し前からですが」
「……敬語。次使ったら父上に言うぜ?」
「なにをだ?」
「ガイラ…むぐっ」
「何処でそれを!?」
「俺はライガを逆さまに呼んだだけだぜ?」
ルークはにたりと笑った。とことん黒い笑みにガイは、あぁ、俺は育て方を間違っただろうかと、育ててもいないのにそう思ってしまった。
「でもな、ガイ復讐なんてなにも生まないよ。苦しいだけだ」
「ルーク?」
「多分、俺はこれから軟禁される。『マルクト』に誘拐されちまったからな。そろそろ伯父上から命が下されるはずだし」
「ルーク…」
ガイはルークを疑わしげな目で見ている。そんなガイにルークは笑って見せた。
「ルークはガイのこと大好きだからな」
「ルーク…今のは文法としてへんだぞ?」
「いいんだって、これで。それよりガイ、俺所々記憶抜けてんだ、だから勉強し直したいんだけど基礎から教えてくんない?」
どうやら勤勉な所は変わってないらしいが、やっぱりどこかおかしかった。そんな違和感をひしひしと感じつつガイはルークに勉強の基礎を教える事になった。
ガイがルークのあまりの黒さにねを上げるのはそれから数時間後のことである。
Next→ダアト・信託の盾総本部
「や、ルーク元気に勉強してるね」
「カンタビレ!」
「え?カンタビレって信託の盾のカンタビレか!?」
ガイは夕方近くになってルークの部屋の窓から入って来た男にうろたえた。その前に警備の人間は何をしているのか…。
「そうだよ、はじめましてガイ様。まぁそれはさておきルーク、御所望の品だ」
そういってカンタビレがルークに手渡したのは赤毛の猫(!?)となんかうねうねした生き物の入った袋だ。
「ルーク!?なんだその変なナマモノは!?」
「……俺もわかんない」
ルークも心なし青ざめている。まぁ、確かにこんな何の生き物かさえわからない生き物を手渡されれば誰だってうろたえるだろう。
『じゃあ、ガイ様ちょーっと席外してくんない?』
「あ、『はい』」
カンタビレに言われたガイはルークの部屋から出ていく。ルークはカンタビレをじっとみた。
「ガイに何したんだよ」
「トイレに行ってもらいました。さて、ルーク本題だよ」
カンタビレもといローレライはルークの腕から猫を抱き上げると猫の額を引っ掻いた。毛皮に見えていたカツラがとれ、本来の色であろうミルクティー色が姿を表した。
「はい、カツラ。そっちは染め粉だよ」
うごうごと蠢く謎の生き物を引きはがすと中から白い粉の入った瓶が出てきた。
「ルークが何色に染める気か聞かなかったから万能なの音譜帯に取りに行ってきたんだ」
「ありがとう、ロ……カンタビレ」
カンタビレと呼ばないと駄目ー返事しないもーんとか言われ(ごねられた)たので、ルークは言い直した。ローレライは満足そうだ。
「じゃあ、また今度ね。俺に回線繋いでくれれば迎えに来るから」
カンタビレが窓から出ていくのとガイが部屋に戻ってくるのはほぼ同時だった。
「…ルーク、その毛玉…」
ガイはベッドにこんもりと山になっている赤い毛玉を指指して問い掛けた。
「あ、うん撫でてたらごっそり抜けてさぁ、とりあえず一まとめにしといた。可哀相だから後で籠の下にひくよ」
ルークは猫を撫でながらそういった。
・余談ですが猫の名前はヴァンへの嫌がらせも込めて「メシュティアリカ」
「ルーク様、着きましたよ」
「ぅー…?」
ルークは唸ると声をかけてきた少年を見上げた。
「…ガイ……」
「はい?なんですか?」
「後で…部屋、来て………ぐぅ」
軽く寝言と区別が付かない感じだ。ガイはルークはどうしてしまったのだろうと頭を抱えて悩んだが、結論は出なかったのでルークを抱き抱えて部屋に連れて行くことにした。
…………………………………………………………………………………………………………
『アッシュ、アッシュ聞こえる?』
『あぁ、何だ?』
『バチカル着いたよ』
『そうか、こちらも今ダアトに着いた所だ』
『ローレライは居る?』
『いや?モースに僻地の視察命じられてどっか行った』
ルークはクマに向かって何か話し掛けている。ガイは今度こそルークを医者に見せるべきだと思った。明らかにどうかしてしまっている。
「あ、ガイ。何時から居たんだ?」
ルークはベッドから降りてガイに近寄るが、その歩き方は少しよたよたしていて危なっかしい。
「少し前からですが」
「……敬語。次使ったら父上に言うぜ?」
「なにをだ?」
「ガイラ…むぐっ」
「何処でそれを!?」
「俺はライガを逆さまに呼んだだけだぜ?」
ルークはにたりと笑った。とことん黒い笑みにガイは、あぁ、俺は育て方を間違っただろうかと、育ててもいないのにそう思ってしまった。
「でもな、ガイ復讐なんてなにも生まないよ。苦しいだけだ」
「ルーク?」
「多分、俺はこれから軟禁される。『マルクト』に誘拐されちまったからな。そろそろ伯父上から命が下されるはずだし」
「ルーク…」
ガイはルークを疑わしげな目で見ている。そんなガイにルークは笑って見せた。
「ルークはガイのこと大好きだからな」
「ルーク…今のは文法としてへんだぞ?」
「いいんだって、これで。それよりガイ、俺所々記憶抜けてんだ、だから勉強し直したいんだけど基礎から教えてくんない?」
どうやら勤勉な所は変わってないらしいが、やっぱりどこかおかしかった。そんな違和感をひしひしと感じつつガイはルークに勉強の基礎を教える事になった。
ガイがルークのあまりの黒さにねを上げるのはそれから数時間後のことである。
Next→ダアト・信託の盾総本部
「や、ルーク元気に勉強してるね」
「カンタビレ!」
「え?カンタビレって信託の盾のカンタビレか!?」
ガイは夕方近くになってルークの部屋の窓から入って来た男にうろたえた。その前に警備の人間は何をしているのか…。
「そうだよ、はじめましてガイ様。まぁそれはさておきルーク、御所望の品だ」
そういってカンタビレがルークに手渡したのは赤毛の猫(!?)となんかうねうねした生き物の入った袋だ。
「ルーク!?なんだその変なナマモノは!?」
「……俺もわかんない」
ルークも心なし青ざめている。まぁ、確かにこんな何の生き物かさえわからない生き物を手渡されれば誰だってうろたえるだろう。
『じゃあ、ガイ様ちょーっと席外してくんない?』
「あ、『はい』」
カンタビレに言われたガイはルークの部屋から出ていく。ルークはカンタビレをじっとみた。
「ガイに何したんだよ」
「トイレに行ってもらいました。さて、ルーク本題だよ」
カンタビレもといローレライはルークの腕から猫を抱き上げると猫の額を引っ掻いた。毛皮に見えていたカツラがとれ、本来の色であろうミルクティー色が姿を表した。
「はい、カツラ。そっちは染め粉だよ」
うごうごと蠢く謎の生き物を引きはがすと中から白い粉の入った瓶が出てきた。
「ルークが何色に染める気か聞かなかったから万能なの音譜帯に取りに行ってきたんだ」
「ありがとう、ロ……カンタビレ」
カンタビレと呼ばないと駄目ー返事しないもーんとか言われ(ごねられた)たので、ルークは言い直した。ローレライは満足そうだ。
「じゃあ、また今度ね。俺に回線繋いでくれれば迎えに来るから」
カンタビレが窓から出ていくのとガイが部屋に戻ってくるのはほぼ同時だった。
「…ルーク、その毛玉…」
ガイはベッドにこんもりと山になっている赤い毛玉を指指して問い掛けた。
「あ、うん撫でてたらごっそり抜けてさぁ、とりあえず一まとめにしといた。可哀相だから後で籠の下にひくよ」
ルークは猫を撫でながらそういった。
・余談ですが猫の名前はヴァンへの嫌がらせも込めて「メシュティアリカ」
「じゃあ、ルークにはこれを渡しておこうね」とローレライは懐から黒いマニキュアを取り出した。
「何コレ」
「アッシュはバチカル戻らないつもりなんだって、それというのもルークにお勉強をしてもらうためなんだけど」
なんでもアッシュいわく、ルークは基礎知識に欠落があるからもう少ししっかり勉強をしたほうがいいというのと、ガイやナタリアの前でボロを出さない自信がないからということだった。
「むぅ…アッシュに先手打たれた」
「そこでこれの出番」
ローレライはマニキュアを指して笑う。
「ルーク髪の毛染めるつもりでしょ?」
「うん、なんで?」
「何となくね。そのためにはカツラとか信託の盾の軍服とかいるわけだ」
「うんうん」
ルークはローレライの言葉に相槌を打ちながら、マニキュアをまじまじと見る。
「カツラはと染め粉は後で届けられるんだけど信託の盾の軍服はそう簡単には手に入らない」
「それで?」
「これは『称号』とおんなじ役目をしてくれるんだ」
「つまり『タオラー』とかと一緒なんだな?」
「そういうこと。偽名は決めてる?」
「グレース」
ローレライは苦笑するとルークの頭を撫でた。
「アッシュが知ったらビックリするね」
「そうだね」
暫くまったりした空気が流れたが、何だか急に下が騒がしくなった。
「あ、どうやらタイムアップみたいだ。じゃあルーク、上手くやるんだよ」
ローレライはひらりと窓から飛び降りて消えてしまった。
「ルーク様!ご無事で……」
ルークを発見した兵士は倒れたくなった。ルークが居る部屋はファンシー過ぎて心臓に悪い。ルークはきゃあきゃあとテディベアにじゃれて遊んでいる。一見微笑ましいが、あの『ルーク』がである。兵士は他の兵士が到着するまで入口で固まったままであった。
Next→
・マニキュアを塗って一定条件こなすと魔女っ娘みたいに変身します(苦笑)
・そして称号で髪色変えられるのに気付かないルークと言わないローレライ…(汗)
「何コレ」
「アッシュはバチカル戻らないつもりなんだって、それというのもルークにお勉強をしてもらうためなんだけど」
なんでもアッシュいわく、ルークは基礎知識に欠落があるからもう少ししっかり勉強をしたほうがいいというのと、ガイやナタリアの前でボロを出さない自信がないからということだった。
「むぅ…アッシュに先手打たれた」
「そこでこれの出番」
ローレライはマニキュアを指して笑う。
「ルーク髪の毛染めるつもりでしょ?」
「うん、なんで?」
「何となくね。そのためにはカツラとか信託の盾の軍服とかいるわけだ」
「うんうん」
ルークはローレライの言葉に相槌を打ちながら、マニキュアをまじまじと見る。
「カツラはと染め粉は後で届けられるんだけど信託の盾の軍服はそう簡単には手に入らない」
「それで?」
「これは『称号』とおんなじ役目をしてくれるんだ」
「つまり『タオラー』とかと一緒なんだな?」
「そういうこと。偽名は決めてる?」
「グレース」
ローレライは苦笑するとルークの頭を撫でた。
「アッシュが知ったらビックリするね」
「そうだね」
暫くまったりした空気が流れたが、何だか急に下が騒がしくなった。
「あ、どうやらタイムアップみたいだ。じゃあルーク、上手くやるんだよ」
ローレライはひらりと窓から飛び降りて消えてしまった。
「ルーク様!ご無事で……」
ルークを発見した兵士は倒れたくなった。ルークが居る部屋はファンシー過ぎて心臓に悪い。ルークはきゃあきゃあとテディベアにじゃれて遊んでいる。一見微笑ましいが、あの『ルーク』がである。兵士は他の兵士が到着するまで入口で固まったままであった。
Next→
・マニキュアを塗って一定条件こなすと魔女っ娘みたいに変身します(苦笑)
・そして称号で髪色変えられるのに気付かないルークと言わないローレライ…(汗)
「カンタビレ…って信託の盾のか?」
アッシュが恐る恐る尋ねるとローレライはあっさりと「うん、そうだよ」と言った。実に軽い感じだ。
「今ここには師団長が全員召集されててね、他の六神将もいるよ。カンタビレって元々俺が地殻から外を見るために創った行動用の躯なんだ」
「あぁ、道理でしょっちゅう居なかった訳だ…俺に六神将が回ってくるくらいに…」
アッシュは溜息を吐いた。ルークはそんなアッシュを見ながらきょとんとする。
「まぁ、とりあえずまだ一日目だ。ヴァン達が俺を連れて此処を離れたのは誘拐うんぬんから二週間後だったから、今のうちに丸め込める奴は丸め込もう」
「ならディストからがいいんじゃないか?シンクはまだ作られてないし、アリエッタもオリジナルイオンの所居るはずだし」
「しっ、ルーク。誰か来る」
足音はしないが、人の近付いてくる気配がする。アッシュとルークは緊張で息を詰めたがローレライはのほほんとしている。
「ルーク、起きていますか?」
「あ、鼻タレディスト」
「きーっ、誰が鼻タレですかっ!!ってなんでレプリカルークはそれを知ってるんですか?」
扉を開けてはいってきたのは、ディストだった。
「ディスト、ドアを閉めてこっちきなよ」
「カンタビレ、こんなところに居たんですか。リグレットが探していましたよ」
「そーなの?解った行くよ。まぁ、どうせルークがヴァンを虐めたからいじけてどっか行ったの探す人手が欲しだけだろうとは思うけど。じゃあそういうことだ二人とも」
ローレライはわしわしとアッシュとルークの頭を撫でると、ひらひらと手を振って部屋を出ていってしまった。後には赤毛二人とディストが残される。
「ルーク」
「?」
「何であれを知っているんですか?」
「それよりさ、ディスト!俺とアッシュの同調フォンスロットあけてくれよ」
「…おかしなレプリカですね。普通スラスラと喋れるようになるまで暫く掛かるはずなんで…」
「あんまり詮索すると言うよ?」
「何を誰にですか」
「「ジェイド(鬼畜眼鏡)にネビリム先生のこととかいろいろ(な)」」
赤毛二人の攻撃にディストは顔を青ざめる。ダラダラと冷汗をかき、視線はどこか明後日の方を向いている。
「で、どうするんだ?」
「二人とも音機関の所まで来て下さい。ルークは歩けますか?」
「試してないからわかんない、アッシュ手貸して」
アッシュはルークに手を差し出し、ルークはそれに掴まって地に足を付ける。しかし直ぐにへたりこんでしまった。
「た…立てない」
「しかたねぇな」
立てないルークをアッシュは姫抱きで抱え上げるとスタスタとディストの元まで行く。
「わわっ!?アッシュ!?」
「我慢しろ、少なくともこの部屋よりはマシだろ」
「………ぅん」
確かにこんな部屋に居るよりかはアッシュにお姫様抱っこされている方がマシである。
「じゃ、ディストよろしく」
ディストは恐い恐い幼なじみを彷彿とさせる赤毛二人の笑みに耐えながら、あたふたと音機関を起動させるのであった。
Next→バチカル、ファブレ公爵家
「あ、ディスト」
「なんです、カンタビレ」
カンタビレはにっこりと笑いながらディストに近寄って行った。ディストはそういえば赤毛二人の笑い方はカンタビレそっくりだなと思いつつ振り向く。
『ディストはさっき何してたのかな?』
「何って…………?『さっき私は部屋でレプリカルークの資料を読んでいましたけど』」
「うん、なら『いいや』」
カンタビレの瞳が猫のように細まりディストは「全く、なんなんですか」と文句を宣いながら部屋に戻って行った。
「うん、これでよし。と」
カンタビレはディストの記憶の書き換えが上手くいったことに満足したのか、再びヴァンを探し始めるのだった。
アッシュが恐る恐る尋ねるとローレライはあっさりと「うん、そうだよ」と言った。実に軽い感じだ。
「今ここには師団長が全員召集されててね、他の六神将もいるよ。カンタビレって元々俺が地殻から外を見るために創った行動用の躯なんだ」
「あぁ、道理でしょっちゅう居なかった訳だ…俺に六神将が回ってくるくらいに…」
アッシュは溜息を吐いた。ルークはそんなアッシュを見ながらきょとんとする。
「まぁ、とりあえずまだ一日目だ。ヴァン達が俺を連れて此処を離れたのは誘拐うんぬんから二週間後だったから、今のうちに丸め込める奴は丸め込もう」
「ならディストからがいいんじゃないか?シンクはまだ作られてないし、アリエッタもオリジナルイオンの所居るはずだし」
「しっ、ルーク。誰か来る」
足音はしないが、人の近付いてくる気配がする。アッシュとルークは緊張で息を詰めたがローレライはのほほんとしている。
「ルーク、起きていますか?」
「あ、鼻タレディスト」
「きーっ、誰が鼻タレですかっ!!ってなんでレプリカルークはそれを知ってるんですか?」
扉を開けてはいってきたのは、ディストだった。
「ディスト、ドアを閉めてこっちきなよ」
「カンタビレ、こんなところに居たんですか。リグレットが探していましたよ」
「そーなの?解った行くよ。まぁ、どうせルークがヴァンを虐めたからいじけてどっか行ったの探す人手が欲しだけだろうとは思うけど。じゃあそういうことだ二人とも」
ローレライはわしわしとアッシュとルークの頭を撫でると、ひらひらと手を振って部屋を出ていってしまった。後には赤毛二人とディストが残される。
「ルーク」
「?」
「何であれを知っているんですか?」
「それよりさ、ディスト!俺とアッシュの同調フォンスロットあけてくれよ」
「…おかしなレプリカですね。普通スラスラと喋れるようになるまで暫く掛かるはずなんで…」
「あんまり詮索すると言うよ?」
「何を誰にですか」
「「ジェイド(鬼畜眼鏡)にネビリム先生のこととかいろいろ(な)」」
赤毛二人の攻撃にディストは顔を青ざめる。ダラダラと冷汗をかき、視線はどこか明後日の方を向いている。
「で、どうするんだ?」
「二人とも音機関の所まで来て下さい。ルークは歩けますか?」
「試してないからわかんない、アッシュ手貸して」
アッシュはルークに手を差し出し、ルークはそれに掴まって地に足を付ける。しかし直ぐにへたりこんでしまった。
「た…立てない」
「しかたねぇな」
立てないルークをアッシュは姫抱きで抱え上げるとスタスタとディストの元まで行く。
「わわっ!?アッシュ!?」
「我慢しろ、少なくともこの部屋よりはマシだろ」
「………ぅん」
確かにこんな部屋に居るよりかはアッシュにお姫様抱っこされている方がマシである。
「じゃ、ディストよろしく」
ディストは恐い恐い幼なじみを彷彿とさせる赤毛二人の笑みに耐えながら、あたふたと音機関を起動させるのであった。
Next→バチカル、ファブレ公爵家
「あ、ディスト」
「なんです、カンタビレ」
カンタビレはにっこりと笑いながらディストに近寄って行った。ディストはそういえば赤毛二人の笑い方はカンタビレそっくりだなと思いつつ振り向く。
『ディストはさっき何してたのかな?』
「何って…………?『さっき私は部屋でレプリカルークの資料を読んでいましたけど』」
「うん、なら『いいや』」
カンタビレの瞳が猫のように細まりディストは「全く、なんなんですか」と文句を宣いながら部屋に戻って行った。
「うん、これでよし。と」
カンタビレはディストの記憶の書き換えが上手くいったことに満足したのか、再びヴァンを探し始めるのだった。