気まぐれにNL・BLetc.健全から危ないモノまで。
今のとこメインはDMCとTOA。
ボコボコと音を立てる赤いどろどろの水。それが熔岩と呼ばれる物だと彼はまだ知らなかった。唯、熱くて痛くて苦しくて…こんなに苦しいのに楽にはなれなかった。
「大丈夫ですか?」
「う………?」
熱いその水の上にまるで火の妖精のように彼は立っていた。否、彼の足元には足場があるようだ。その足場はとても冷たい。
「苦しいですよね…もう大丈夫ですよ」
「あんたは…」
「グレースです」
「グレース、ヴァンに見つかる!逃げるぞ」
グレースの立っている足場の数メートル先に赤毛の少年が立っている。彼の後ろには気絶しているようだが自分と同じ緑色が横たわっていた。その後ろにもう一人飴色の男。
「はい、行きましょうシンク」
「シン…ク?」
「貴方の名前ですよ」
グレースはシンクを抱えてとんとんと跳ねるように移動していく。グレースのいた足場はグレースが移動し始めた途端赤い水に戻っていった。
「………」
「アイシクルレインで冷やして固めたんです、痛いところがあったら言って下さいね?治しますから」
グレースが笑いながらそういう。シンクの位置からはグレースの顔が見えた。その顔はたどり着いた先にいた赤毛の少年と同じだ。
「あんたもレプリカ?」
「そうですよ」
「そっちは?」
「俺は被験者だ。シンク、暫く一人にするが平気か?」
「平気だよ、アッシュだっけ?」
シンクは赤毛の少年-アッシュ-に向かって頷いた。シンクは彼等の事を見たことがあった。特例の導師守護役として被験者イオンの側に付き添っていたから。
「あぁ。俺達が助けた事は秘密にしろ」
「なんでさ」
「直ぐにわかる…ヴァンと話しが終わった頃に迎えに行く」
アッシュはシンクを横たえてぽつりと譜を唱えた。譜術を使えない者でも歌える子守歌のような物だ。シンクの意識はそこで途絶えた。
「アッシュ、この子たちどうする?」
「漆黒の翼に預ければいいだろう。カンタビレが」
「俺が?」
「どうせ任務とか嘘ついてここにいるんだ。それに俺が今あいつらと顔を合わせるのはまずい」
シンク以外のレプリカイオンを見ながら三人は思案する。ここにはフローリアンは居なかった。おそらくモースが予備として軟禁でもしているのだろう。
「そういう事か、ならいいよ。アッシュ、ルークも早く行ったほうがいいもうじきヴァンが戻ってくる」
二人は頷くとシンクをなるべく熔岩から遠ざけて、そこを後にした。
……………………………………………………
「アッシュ、グレース。今日付けでお前達を導師守護役から解任する」
ヴァンに呼ばれ、ヴァンの執務室に訪れた二人は、ヴァンの言葉にいよいよかと解らないように息を飲んだ。
「ヴァン総長閣下」
「なんだ、グレース」
「私を六神将から外していただけませんか」
ヴァンはグレースの要望に目を見開いた。アッシュはグレースから聞かされていたのだろう。反応は無い。
「何故?」
「私は《導師派》ですから《大詠士派》である六神将には相応しくないと、あぁ心配なさらなくても結構です。これまで通り使って頂いて結構ですから」
グレースはにっこりと笑う。どうやらリグレットに話したことはヴァンには伝わっていないようだ。それはリグレットなりの答えなのだろうと、二人は考えた。「手は組めないが、黙ってはいてやる」と。ある意味共犯のようなものだ。
「そうか、しかたあるまい。グレース」
「はい」
「開いた穴をどう埋める?」
「総長が先日連れていらしたイオン様似の少年が適任かと。六神将には無いタイプの戦闘スタイルですしね」
ヴァンはふむと考える。確かに彼は体術を得意とする戦闘スタイルだ。双剣と譜術を使うグレースの戦闘スタイルとはまた異なっている。
「ならばシンクをお前の引き継ぎとしよう」
「ありがとうございます、総長。シンクは何処に?引き継ぎの事を相談したいので」
「シンクは部屋にいるだろう」
「解りました」
グレースはヴァンに一礼するとヴァンの執務室を後にした。後にはアッシュとヴァンが残される。
「よく許したな。お前はアレを片時も離さなかっただろう?」
「グレースの望みだ。それに六神将で無くなったとしてもあいつが俺の副官なのには変わらない。ヴァン、俺もシンクの所に行く」
アッシュも一礼するとグレースの後を追った。
……………………………………………………
「シンク、居ますか?」
「いるよ、入ってくれば?」
中からシンクの声がしたので、グレースは追い掛けてきたアッシュと共に、シンクの部屋に入った。
「あんたは…グレース」
「お久しぶりですね、シンク」
「そうだね、どうしたのさ急に。僕が話しかけた時も知らないふりしてたくせに」
少し拗ねているのか、シンクは顔を俯かせている。
「六神将の引き継ぎの話ししにきたのと」
グレースは付けていた仮面を外して、シンクに付けた。
「なに?」
「導師と同じ顔曝して歩く訳にはいかねぇだろうが、訓練以外の時は外出してねぇだろ」
「顔を隠せってこと?」
「違いますよ、もっと外に出ましょうって事です」
グレースの顔は見れば見る程アッシュと同じだった。それを見たシンクはぽつりと呟く。
「迷ってる、ヴァンの誘いにのるか」
「あんな髭の為に死ぬことないですよ」
グレースはシンクの髪を撫でて笑った。
「どうしても貴方が誰かの為に死にたいのなら私の為に死んで下さい」
「あんた、見掛けに寄らず随分横暴だね」
「それはアッシュのレプリカですから」
グレースは笑う。それにつられてシンクも笑った。
「なんであの時助けたのさ」
「私とアッシュのエゴです」
言い切ったグレースにシンクはますます笑う。
「気に入ったよあんた。ヴァンよりね」
「あんな変態と同列だとしたら寒気しますから」
「グレース、あんたに助けられた命だ。あんたにあげるよ」
シンクはグレースの髪を掴んで言う。
「そのかわり、僕より先に死んだりしたら許さない」
「解りました。ユリアに誓って」
グレースはシンクを抱きしめると何度も何度も髪を撫でた。そんなグレースをアッシュは無言で見ていたかと思えばシンクの隣に座って、シンクの髪を弄るグレースの頭を撫でていた。
「なんか、犬か猫のグルーミングみたいだ」
シンクは自分を猫可愛がりする二人に、嬉しさ半面恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
NEXT→バチカル・ファブレ邸
〈更にその後〉
「いつまで触ってんのさ」
「シンクいいにおいしますね」
「いいにおいがするのはあんただよ…」
いつの間にか日は傾いていて、でもグレースはシンクを抱きしめたままだ。アッシュは飽きてきたのか、部屋に戻って取ってきた本をめくりながら紅茶を飲んでいる。
「アッシュ、私にも下さい。紅茶」
「解った。シンクはどうする」
「紅茶って何…」
「飲み物の一種だ。甘いのとストレートどっちがいい」
「甘い方」
どうやら味覚は被験者イオンとたいして変わらないようだとアッシュはその時判断したのだが…シンクの味覚は導師と違ってまともだったらしい。
「甘すぎるよ!砂糖いくついれたのさ!?」
「先に聞けばよかったな…すまない導師が好きな甘さにしてしまった」
「被験者のイオン様は砂糖30以上入れますからね…」
二人とも心なしげっそりしている。
「俺のを飲んでいろ」
「これは?」
「生クリームに混ぜる」
「美味しいですよ?アッシュのケーキ」
グレースがそういうので美味しいのだろうなとシンクは思った。なんだかんだ言って味覚はまだ子供だ。
「用意してくるから待っていろ」
「はい」
シンクの部屋から出ていくアッシュをグレースとシンクは見送る。
「アッシュはグレースに甘いんだね」
「まぁ、一応夫婦扱いされてる身ですからね…」
「は?」
「私が妻でアッシュが旦那。アリエッタが娘で、ラルゴがおじいちゃんです。シンクは息子ですかね?」
「聞かないでよ…」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないよ」
フォミクリーで作り出されたシンクに親はいない。それはグレースも同じだ。
「母さんか…」
「グレース、手伝え」
「はい、シンク。これ持ってて下さい」
ケーキの箱と、食器をシンクに預けて、アッシュとグレースは机をずらす。遅めのティータイムは始まったばかりである。
それから月に一度、この小さいティーパーティーはシンクの部屋で行われている。
・二回目からはアリエッタも一緒です
「大丈夫ですか?」
「う………?」
熱いその水の上にまるで火の妖精のように彼は立っていた。否、彼の足元には足場があるようだ。その足場はとても冷たい。
「苦しいですよね…もう大丈夫ですよ」
「あんたは…」
「グレースです」
「グレース、ヴァンに見つかる!逃げるぞ」
グレースの立っている足場の数メートル先に赤毛の少年が立っている。彼の後ろには気絶しているようだが自分と同じ緑色が横たわっていた。その後ろにもう一人飴色の男。
「はい、行きましょうシンク」
「シン…ク?」
「貴方の名前ですよ」
グレースはシンクを抱えてとんとんと跳ねるように移動していく。グレースのいた足場はグレースが移動し始めた途端赤い水に戻っていった。
「………」
「アイシクルレインで冷やして固めたんです、痛いところがあったら言って下さいね?治しますから」
グレースが笑いながらそういう。シンクの位置からはグレースの顔が見えた。その顔はたどり着いた先にいた赤毛の少年と同じだ。
「あんたもレプリカ?」
「そうですよ」
「そっちは?」
「俺は被験者だ。シンク、暫く一人にするが平気か?」
「平気だよ、アッシュだっけ?」
シンクは赤毛の少年-アッシュ-に向かって頷いた。シンクは彼等の事を見たことがあった。特例の導師守護役として被験者イオンの側に付き添っていたから。
「あぁ。俺達が助けた事は秘密にしろ」
「なんでさ」
「直ぐにわかる…ヴァンと話しが終わった頃に迎えに行く」
アッシュはシンクを横たえてぽつりと譜を唱えた。譜術を使えない者でも歌える子守歌のような物だ。シンクの意識はそこで途絶えた。
「アッシュ、この子たちどうする?」
「漆黒の翼に預ければいいだろう。カンタビレが」
「俺が?」
「どうせ任務とか嘘ついてここにいるんだ。それに俺が今あいつらと顔を合わせるのはまずい」
シンク以外のレプリカイオンを見ながら三人は思案する。ここにはフローリアンは居なかった。おそらくモースが予備として軟禁でもしているのだろう。
「そういう事か、ならいいよ。アッシュ、ルークも早く行ったほうがいいもうじきヴァンが戻ってくる」
二人は頷くとシンクをなるべく熔岩から遠ざけて、そこを後にした。
……………………………………………………
「アッシュ、グレース。今日付けでお前達を導師守護役から解任する」
ヴァンに呼ばれ、ヴァンの執務室に訪れた二人は、ヴァンの言葉にいよいよかと解らないように息を飲んだ。
「ヴァン総長閣下」
「なんだ、グレース」
「私を六神将から外していただけませんか」
ヴァンはグレースの要望に目を見開いた。アッシュはグレースから聞かされていたのだろう。反応は無い。
「何故?」
「私は《導師派》ですから《大詠士派》である六神将には相応しくないと、あぁ心配なさらなくても結構です。これまで通り使って頂いて結構ですから」
グレースはにっこりと笑う。どうやらリグレットに話したことはヴァンには伝わっていないようだ。それはリグレットなりの答えなのだろうと、二人は考えた。「手は組めないが、黙ってはいてやる」と。ある意味共犯のようなものだ。
「そうか、しかたあるまい。グレース」
「はい」
「開いた穴をどう埋める?」
「総長が先日連れていらしたイオン様似の少年が適任かと。六神将には無いタイプの戦闘スタイルですしね」
ヴァンはふむと考える。確かに彼は体術を得意とする戦闘スタイルだ。双剣と譜術を使うグレースの戦闘スタイルとはまた異なっている。
「ならばシンクをお前の引き継ぎとしよう」
「ありがとうございます、総長。シンクは何処に?引き継ぎの事を相談したいので」
「シンクは部屋にいるだろう」
「解りました」
グレースはヴァンに一礼するとヴァンの執務室を後にした。後にはアッシュとヴァンが残される。
「よく許したな。お前はアレを片時も離さなかっただろう?」
「グレースの望みだ。それに六神将で無くなったとしてもあいつが俺の副官なのには変わらない。ヴァン、俺もシンクの所に行く」
アッシュも一礼するとグレースの後を追った。
……………………………………………………
「シンク、居ますか?」
「いるよ、入ってくれば?」
中からシンクの声がしたので、グレースは追い掛けてきたアッシュと共に、シンクの部屋に入った。
「あんたは…グレース」
「お久しぶりですね、シンク」
「そうだね、どうしたのさ急に。僕が話しかけた時も知らないふりしてたくせに」
少し拗ねているのか、シンクは顔を俯かせている。
「六神将の引き継ぎの話ししにきたのと」
グレースは付けていた仮面を外して、シンクに付けた。
「なに?」
「導師と同じ顔曝して歩く訳にはいかねぇだろうが、訓練以外の時は外出してねぇだろ」
「顔を隠せってこと?」
「違いますよ、もっと外に出ましょうって事です」
グレースの顔は見れば見る程アッシュと同じだった。それを見たシンクはぽつりと呟く。
「迷ってる、ヴァンの誘いにのるか」
「あんな髭の為に死ぬことないですよ」
グレースはシンクの髪を撫でて笑った。
「どうしても貴方が誰かの為に死にたいのなら私の為に死んで下さい」
「あんた、見掛けに寄らず随分横暴だね」
「それはアッシュのレプリカですから」
グレースは笑う。それにつられてシンクも笑った。
「なんであの時助けたのさ」
「私とアッシュのエゴです」
言い切ったグレースにシンクはますます笑う。
「気に入ったよあんた。ヴァンよりね」
「あんな変態と同列だとしたら寒気しますから」
「グレース、あんたに助けられた命だ。あんたにあげるよ」
シンクはグレースの髪を掴んで言う。
「そのかわり、僕より先に死んだりしたら許さない」
「解りました。ユリアに誓って」
グレースはシンクを抱きしめると何度も何度も髪を撫でた。そんなグレースをアッシュは無言で見ていたかと思えばシンクの隣に座って、シンクの髪を弄るグレースの頭を撫でていた。
「なんか、犬か猫のグルーミングみたいだ」
シンクは自分を猫可愛がりする二人に、嬉しさ半面恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
NEXT→バチカル・ファブレ邸
〈更にその後〉
「いつまで触ってんのさ」
「シンクいいにおいしますね」
「いいにおいがするのはあんただよ…」
いつの間にか日は傾いていて、でもグレースはシンクを抱きしめたままだ。アッシュは飽きてきたのか、部屋に戻って取ってきた本をめくりながら紅茶を飲んでいる。
「アッシュ、私にも下さい。紅茶」
「解った。シンクはどうする」
「紅茶って何…」
「飲み物の一種だ。甘いのとストレートどっちがいい」
「甘い方」
どうやら味覚は被験者イオンとたいして変わらないようだとアッシュはその時判断したのだが…シンクの味覚は導師と違ってまともだったらしい。
「甘すぎるよ!砂糖いくついれたのさ!?」
「先に聞けばよかったな…すまない導師が好きな甘さにしてしまった」
「被験者のイオン様は砂糖30以上入れますからね…」
二人とも心なしげっそりしている。
「俺のを飲んでいろ」
「これは?」
「生クリームに混ぜる」
「美味しいですよ?アッシュのケーキ」
グレースがそういうので美味しいのだろうなとシンクは思った。なんだかんだ言って味覚はまだ子供だ。
「用意してくるから待っていろ」
「はい」
シンクの部屋から出ていくアッシュをグレースとシンクは見送る。
「アッシュはグレースに甘いんだね」
「まぁ、一応夫婦扱いされてる身ですからね…」
「は?」
「私が妻でアッシュが旦那。アリエッタが娘で、ラルゴがおじいちゃんです。シンクは息子ですかね?」
「聞かないでよ…」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないよ」
フォミクリーで作り出されたシンクに親はいない。それはグレースも同じだ。
「母さんか…」
「グレース、手伝え」
「はい、シンク。これ持ってて下さい」
ケーキの箱と、食器をシンクに預けて、アッシュとグレースは机をずらす。遅めのティータイムは始まったばかりである。
それから月に一度、この小さいティーパーティーはシンクの部屋で行われている。
・二回目からはアリエッタも一緒です
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